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■ブランド構築には企業の独自性を追求する姿勢が必要

 日本では、多くの企業がCMに旬なセレブリティを起用しています。『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』は、それについて「メリットもあるけれどもデメリットも多い」と分析しています。理由は2つ。

 1つは、旬なセレブリティはいろんな広告に出ているので、自社の広告が他の企業の広告を連想させてしまう場合があるという問題です。これは確かに、自社の広告費の無駄ですね。もう1つは、旬なセレブリティはその人に関する情報、例えば恋人や家族の話などが大量に流布しているので、広告を見た人はそれも思い出してしまうことになり、広告で伝えたい内容の伝達を妨げることになってしまう、という問題があります。

 そして、旬なセレブリティを使うよりも、一貫性を持って、有名ではない専属のスポークスパーソンを使うほうが有効だと、明確に指摘しています。つまり、セレブリティは必ずしも優良なブランド資産とは言えないわけです。私もセレブリティなしで成立する広告が良い広告と考えています。「ブランディングの敵はセレブ好き」なんですよね。

 ただし、CM好感度を気にする広告代理店さんは、セレブリティを使わない広告には、なかなかうんと言わないでしょう。でも、じつはCM好感度と企業の業績というのは全く関係がありません。業界の多くの人が誤解されている点です。CM好感度至上主義は見直したほうがいいと思います。

 有名なアニメなどのキャラクターを会社のコミュニケーションのキャラクターに使うケースも少なくありません。その功罪においても、セレブリティと同じことが言えます。

 広告代理店さんは、旬なセレブリティや有名なアニメキャラクターを出しておけば、クライアントがオーケーしやすいとわかっていて提案してきます。でも、旬のセレブリティーやキャラクターを使ったコミュニケーションは、ブランドとしての独自性を減らすだけかもしれませんし、本当に伝えたいことに関するコミュニケーションの効率を下げているかもしれません。

 ブランド資産を築くためには、広告代理店任せではダメなのです。あくまでも企業自身が独自性を追求する必要があります。しかも一貫性をもって……。『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』は、こうしたブランディングの大原則を改めて教えてくれました。