暑くなれば汗が出るものですが、あまりに出すぎる人はどうすればいいのでしょうか。そもそも汗の機能とは? 近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が汗とその対策について解説します。

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 これまでオンラインがメインだった学会もリアルでの開催が増えてきました。久しぶりにスーツを着て新幹線に乗るわけですが、学会場に着くまでの間に汗がびっとり。特に脇の汗がひどい場合は、せっかくのシャツが残念なことになります。暑くなってきたいま、改めて汗のこととその対策について解説したいと思います。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 汗は、皮膚にある汗腺という器官から分泌される液体です。汗にはさまざまな機能があります。まずは体温調節。体温が上昇した際に汗をかき、皮膚表面から蒸発時の気化熱で体温を下げる効果があります。これは皆さんよくご存じの汗の働きですね。

 手に汗をかくのは、滑り止めの機能のためと言われています。手指の適度な湿り気は、物を持つときの摩擦力を大きくするためです。

 最近の研究では、汗をかくことで感染防御の機能もあることがわかりました。これは汗に含まれる抗菌ペプチドが細菌感染を抑える効果があるためです。ほかに、汗をかくことでダニ由来のシステインプロテアーゼを阻害し異物の侵入を防ぐ機能も言われています。

 汗をかくとかゆくなる人も多いのではないでしょうか? アトピー性皮膚炎の患者さんでは、汗をかくことでアトピーが悪化することが知られています。これは汗の成分そのものが悪さをしている可能性と、皮膚にもともと存在するカビの成分でかゆくなる可能性といくつかのメカニズムが想定されています。

 汗はできればかきたくないのですが、すでに説明したように感染防御の観点では重要ですし、また汗の中には天然の保湿因子である尿素や乳酸が含まれます。汗をかくことで保湿効果も生まれます。汗をかける場面ではしっかり汗をかいて、その後かゆくならないようにシャワーや濡れタオルでさっと拭き取ることが大事です。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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