成りすましの被害にあったシンガーソングライターの大石昌良さんは、自身のツイッターで、こう否定した。
(フォロワーさんに教えていただいたのですが、僕の名前が載っているらしく!身に覚えがなかったのですが、どうやら誰かが勝手にサイトのフォームに運動に賛同する旨の投稿したらしく、知らないうちに名前が掲載されていたっぽいです!あしからず!)
先の五野井さんがこう説明する。
「賛同人を募集してから2、3日目には、著名アーティストへの成りすましや故人の名前を書くなど、悪質な妨害行為と思われる署名が何件かありました。とまれ、地方自治体で選挙管理委員会が逐一チェックするような正式なリコール請求署名と異なります。一般のオンライン署名専用のウェブサイトや紙の署名でも同様のなりすましによる嫌がらせは一定数起こり得ます。いかなる署名という形式であっても善意を前提としている以上は、防ぎようがありません。」
「SaveOurSpace」が音楽4団体による今井氏と生稲氏の「支持」に反発した理由には様々な背景がある。
たとえば人種差別を背景としてアフリカ系アメリカ人の間で「黒人霊歌」が生まれた。そしてブルース、ジャズやヒップホップにつながったように、音楽は多様性や少数者を包摂する営みの中で育まれてきた歴史的経緯があるという点だ。
マイノリティには、LGBTQ+といった人々や女性、経済弱者もふくまれる。
この点について五野井さんは、生稲氏も自民党の政策も、同性婚の法制化や性的指向や性自認に関する差別禁止を明記した「LGBT平等法」への反対。加えて、議会におけるクオータ制や選択的夫婦別姓の導入等には消極的だが、経済弱者である小規模音楽事業者に不利なインボイス制度の導入には積極的だと指摘する。
「音楽業界に生きる人々がよって立つ理念とは思想があまりに異なる候補者を支持することには、違和感しかない」と話す。
一方で政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、「音楽という世界は、枠にはめられず思想の自由や個性が尊重される価値観の中にある。そうした業界を代表する音楽4団体が、特定政党を応援するのは、なじまないという事情や衝撃はよく理解できる」と話したうえで、現状についてこう分析する。
「業界団体が組織を構成する会員と関係なく、政党を支持するのはよくあることではあります。たとえば、日本医師会や日本医師連盟は自民党を支援して、組織内からも政治家を国会に送り出しています。一方で個人の医師がどの政党を応援しようと自由です。今回、音楽4団体にどのくらい組織力があって、会員の皆さんがどれほど政治に協力するかは未知数です。しかし、前例がこの先の陳情や音楽業界から政治家になる人の道を開くきっかけにはなります。今回の動きが重要な転機になるかどうかはわからないが、声を届けるチャンネルはお互いにあった方がよい」