それでも音楽業界が反対の声をあげた背景には、両候補者に対する不信感もあるようだ。

 7月5日、ジャーナリストの津田大介さんがキャスターを務めるインターネット番組『ポリタスTV』に、「SaveOurSpace」の抗議の発起人でもある篠田ミル(yahyel)さん、都内のライブハウス・下北沢LIVE HAUSの店主を務めるスガナミユウさん、シンガーソングライターのNozomi Nobodyさんが出演した。

 番組のなかで、スガナミさんは今井氏が音楽業界とのパイプになり得るかという点について、不安な胸の内をこう漏らした。

「芸能の功績だけで応援するのは筋が悪いのではと思う」 

 また、自民党議員の集まりに「SaveOurSpace」が呼ばれて話しにいった際のことをこう振り返った。

「今井絵理子さんと最初に名刺交換をしたのですが、僕たちの話を一切聞かずに退席されて、すごく悲しかった」

 五野井さんはこの騒動について、長い活動歴をもつ大物ミュージシャンと先日、議論を交わしたばかりだ。五野井さんは、他の懸念材料についてこう話す。

「ベテランのミュージシャンほど、4音楽団体や所属事務所の意向に沿って仕事をしてきたので、自由な声を上げにくいのです。つまり、所属する事務所や圧倒的な影響力を持つ音楽団体が『〇〇を応援しなさい』といえば、事実上拒否することは難しい」

 だが、希望もある。

 音楽業界で生きる人たちの仕事の仕方に、わずかではあるが変化が生じているのだ。 

 たとえば、抗議の発起人に名を連ねていたDJでミュージシャンのMars89さんや篠田ミルさんだ。団体に頼らず自ら発表の場を作り出し、海外でも高く評価されているからこそ、自分の意志で反対の声をあげることができた。

「所属事務所や音楽4団体の意向を忖度せずに仕事を生み出せるアーティストは、発言も思想も縛られることがない。これからは、そうした新しい仕事の仕方を選択できるアーティストたちが増え、もっと自由に声を上げることが出来るようになるでしょう」

 7月10日の参院選投開票で、果たして今井氏、生稲氏はどのような評価を受けるのか。

(AERAdot.編集部・永井貴子)