亀井静香氏
亀井静香氏

 世界でも存在感を発揮していたよ。アメリカの“ポチ”になることもなく、中国にもへりくだることなく、堂々と対応していた。彼らに「晋三は手ごわい相手だ」と思わせていただろうし、同時に尊敬もされていただろうと思う。トランプ前大統領が哀悼の意を表したのはそういうことだろ。

 岸田首相は、非常に人柄はいいけど、世界の中では人柄が良いだけでは国益は守れない。他国からある程度、恐れられるようなドスの利いた首相じゃないと。晋三は、きらりと光る日本刀みたいなところがあった。

 今の日本の状況は厳しいよ。経済は、G7の中でもワーストクラスになっている。経済大国が貧乏なってしまっているのも問題だけど、それよりも何よりも心の貧困化も進んでいるのがより深刻だよ。

 晋三は、強硬なタカ派に見られたりするけど、そんなことないですよ。 最近の政治家は、特に自民党の政治家は、「左っぽい」ふりをして、インテリぶった世の中の一部とバランスを取ろうとするだろ? そういったのは晋三にはなかった。真っすぐに、自分の信条通りに政治を進めていた。

 人間はいつの日か、あの世にいく。だけど、あまりに早かった。言葉では言い尽くせないような気持ちだな。親父(晋太郎氏)も67歳で早く逝ってしまったけど、同じ年齢で逝ってしまうとはね。

 晋三は純粋な男だった。私利私欲がない。偉くなろうというのもない。気持ちの良い付き合いができた。本当に残念でならない。

(構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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