元女性自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、訓練中に受けた性暴力をYouTubeなどで告発して話題となっている。五ノ井さんは、「セクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、AERA dot.の単独インタビューに応じた。「前編」では具体的な性被害の実態を詳述したが、「後編」では五ノ井さんが自衛隊を志した理由、セクハラを受けてもすぐには辞職せず、今回の告発に踏み切った思いなどを聞いた。
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※「前編」より続く。
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宮城県東松島市出身の五ノ井里奈さん(22)は、小学4年生の時に東日本大震災に見舞われた。小学校にいる時に被災し、学校の1階部分は津波で浸水した。五ノ井さんたち児童は2階に逃げて無事だったが、避難所生活の後、母親と再開できたのは1週間後。家に戻ると、1階部分は津波に流され、室内で飼っていた愛犬2頭が亡くなっていた。散り散りに避難していた父親と兄2人とも再会し、その後は公民館で避難生活を送った。
この時、災害支援に来てくれたのが女性自衛官だった。
「女性自衛官がお風呂を造ってくれたり、お風呂上がりには腕相撲をしたりして、遊んでくれました。私は小さい頃から柔道のオリンピック選手を目指していたので女性自衛官にそのことを伝えると、『柔道は続けたほうがいいよ。頑張ってね』と応援してくれました。私にとって憧れの存在でした。この時から、いつかは陸上自衛隊に入りたいと夢を抱くようになりました」(五ノ井さん)
11年たったいまでも、女性自衛官と連絡を取り合って、感謝の言葉を伝えているという。
公民館で3カ月過ごした後、五ノ井さん一家はアパートに移った。しかし、小学6年生の時に両親は離婚。がんの治療中だった母親が、3人の子どもを女手ひとつで育てることになった。
五ノ井さんは、中学・高校と柔道で全国大会ベスト16の成績を残し、山口県にある大学に進学する。だが自衛官への夢が捨てきれずに中退。自衛隊体育学校の柔道部に入って、オリンピックを目指すことにした。好きな柔道を続けながら、自衛官アスリートへの道を切り開こうとしたのだ。