検察審査会に不服申し立てをした際の五ノ井さんの直筆文書。画像の一部を加工しています(本人提供)
検察審査会に不服申し立てをした際の五ノ井さんの直筆文書。画像の一部を加工しています(本人提供)

 この不起訴処分に関して、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士はこう疑問を呈する。

「圧倒的に男性が多い自衛隊のような閉ざされた空間で性暴力が起きると、『見ていない』と口裏を合わせる可能性があります。今回はどうだったのか。加害者が何人もいる場合、供述に矛盾が生じることがあります。一貫して細部まで同じことを言っているのか、そうでないのか。すべて同じであれば、口裏合わせをしている可能性もあるでしょう。丁寧に供述の評価が行われたのか疑問の余地が残ります」

 不起訴後、五ノ井さんが検察官にその理由を尋ねると「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない(という供述だった)」と説明されたという。ただ、伊藤弁護士は、首に手をかけて押し倒している時点で暴行罪を問うことができるとも指摘する。

「少なくとも押し倒した所を見ている人がいたわけですから、立件すべきです。なぜ検察は暴行罪で起訴しなかったのかも非常に疑問です」

 たとえ刑事事件で起訴されなかったとしても、民事裁判でハラスメントが認定されることもある。伊藤弁護士は「第三者委員会を立ち上げて、構造的な問題を調査する必要がある」と話す。

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