AERA dot.の単独インタビューに応じた五ノ井さん(撮影/岩下明日香)
AERA dot.の単独インタビューに応じた五ノ井さん(撮影/岩下明日香)

 2020年4月、晴れて陸上自衛隊に入隊する。だが、「前編」で記したように、配属された東北方面の中隊では日常的にセクハラをされ、ひどい性暴力を受けた。五ノ井さんは次第に追い詰められていく。

「常にセクハラはあったので、受けている方も感覚がまひしてしまうんです。外ではアウトなことも、自衛隊内ではセーフになってしまう雰囲気がありました。男性隊員は、コミュニケーションの一部だと解釈していたようです。その意識を改善させることはほぼ不可能です。結局は、被害を受けた女性隊員がいなくなるしか解決策はないんですよね。私も自分で自分の身を守るためには逃げるしかありませんでした」

 五ノ井さんは、2021年8月に複数の男性隊員から受けた性暴力を機に、休職することになった(被害の詳細は「前編」参照)。精神科医からは、適応障害と診断され、3~4カ月分の薬が処方された。

「憧れていた自衛官になるという夢を失い、どん底でした。先の見えない生活に絶望して、好きな柔道もできなくなりました。震災の時に助けてもらった女性自衛官みたいになりたくて入隊したのに、内部ではあんなにひどい実態があるなんて思ってもいませんでした……」

 精神的に追い詰められ、何度も自死を考えた。覚悟を決めた今年の3月16日深夜、思いがけないことが起こった。

「ベッドの上に正座して、よしっ、と決断した時に、震度6強のすごく大きな地震がきたんです。その時、思いました。ああ、ここで死んではいけない。地震のせいで、生きられなかった人がいるのに、自分は何をしているんだろうって」

 東日本大震災の記憶がよみがえり、五ノ井さんは自死を踏みとどまった。「どうして被害者が泣き寝入りして苦しまなければならないのか。性暴力に負けてはいけない」と組織と闘うことにした。

 昨年8月に受けた性暴力について、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。今年5月末に不起訴処分になったが、現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
弁護士は「不起訴処分」に疑問