少人数制教育が特徴で、情報ネットワーク特論を担当する中村教授の研究室には毎年数人が所属し、文系の学生も在籍している。
「文系出身でも問題ありません。たとえばプログラミングは理系のイメージかもしれませんが、あくまでも言語なので英語や日本語と変わらないのです」(同)
中村教授の専門はビッグデータ解析と、大量のデータから統計学などの分析手法で知見を見出すデータマイニングだ。研究テーマは人工知能、自然言語処理、土木情報学など幅広い。
研究では実践と結びついた学びが多く、 産官学連携のプロジェクトも進めている。そのひとつが静岡県からの依頼で実施しているインフラDXのためのデジタルツイン環境の整備だ。道路に面した部分(のり面)をレーザースキャナで計測し、点群データに加工して解析する。データを集めることで、ブロック擁壁などの構造物がいつ建てられたか、木などの自然物か、補修が必要かどうかの判断材料になる。
「できるだけ社会の課題に即した研究を行います。こうした訓練を重ねれば、社会に出たとき課題に気づき、改善案を提案できるようになります」(同)
修士1年の井川孔貴さんは同大学の学部入試では数学なしの文系科目で受験した。学部時代も中村教授のゼミに所属し、課題であるビジネスプランコンテストに応募した。
「ビジネスとして成り立つように案をまとめていくのですが、プログラムで解決できないかを考えるのが楽しかったですね」(井川さん)
それがきっかけで、より専門的なIT知識を身につけたいと大学院に進学。
「数学がネックになるのではと思っていたのですが、それほどハンディにはなりませんでした。高度なプログラムはすでに先人たちが作ったものを利用できるので、自由な発想でプログラミングしていくイメージです」(同)
井川さんは音声情報などを用いて、動画内の盛り上がり箇所を抽出する研究を行っている。1年次から活躍の場を作るのが中村教授の方針で、近々学会で発表する予定だ。
大学院では文系学部出身者も、また、文系分野のテーマでもデータサイエンスを用いた研究を行っている。大学では今、文理融合プログラムでの人材育成を進めている。あらゆる分野で、また、世界で活躍できる「データサイエンティスト」の輩出を期待したい。
(取材・文 柿崎明子)
※アエラムック『大学院・通信制大学2023』より