装着者の表情を認識できる特殊なVRゴーグルを用いて、メタバース上でのアバター表現について研究している(武蔵野大学)
装着者の表情を認識できる特殊なVRゴーグルを用いて、メタバース上でのアバター表現について研究している(武蔵野大学)

 修士2年の福田つかささんは、石橋教授が率いるAI美術館のプロジェクトに参加。バーチャル美術館を構築し、ユーザーの行動をもとに好みの絵を抽出する研究を行っている。福田さんは学部ではマーケティングを専攻、データサイエンスを用いて研究をさらに深めたいと大学院へ進学した。

「初心者なので心配だったのですが、初歩から指導してもらいました。VRを使ったゲームや混雑度を測るシステムなど、毎回いろいろなプログラミングをして、達成感を感じていました」(福田さん)

 この6月に得意な英語を生かして、研究成果を国際学会で発表した。

 大学院の入学者は学部卒業後すぐに進学する学生が多いが、会社の課題を解決するために派遣され進学する社会人大学院生もいるという。授業は16時20分から始まり、ウェブ展開もしているため、社会人でも受講しやすい。

「データサイエンスには文系が向いている分野があります。新しいビジネスやサービスを考えるときに、コンピューターとだけ向き合ってきた学生と、社会学や経済学、経営学を学んだ学生を比較すると、後者に優位性が認められることが多々あります」(石橋教授)

■データサイエンスで文化現象を読み解く

 データサイエンスの手法を使い、文化現象の新たな姿を見つけ出す、文化情報学研究科を設置しているのが同志社大学だ。4コースに分かれており、文化資源学コースで指導する河瀬彰宏准教授はデータサイエンスを用いてさまざまな文化現象の法則を見出す計量文化解析を指導している。

「計量文化解析は、科学的に人の行動様式・生活様式に内在する法則を探究する方法論です」(河瀬准教授)

 河瀬准教授の研究テーマのひとつが、統計科学を用いた日本民俗音楽のメロディーの分析だ。昔から音楽への関心が深く、理系的なアプローチで音楽を追究する。研究テーマは音楽に留まらず、俳優の共演関係、民話の物語構造、政治家の演説、婚姻と趣向の因果関係など社会科学の領域にも広がる。

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理の垣根を越える体験