手始めに、座間市周辺にある大手小売りの店舗を訪ね、食材の寄付をお願いしたが、けんもほろろに追い返された。個々の店舗では対応していないという理由だった。それではと本社の顧客相談窓口にメールを送ってみたが、「弊社ではそういったことはやっておりません」と、こちらも話が先に進まない。

「こういう話は本社のCSR担当と直に交渉しなければダメだ」と感じた松本は、伝手を辿ってアポを取り、パワーポイントで作った資料をひっさげてプレゼンに出向いたこともあった。

■救いの手を差し伸べた「コストコ」

 その中で松本たちがラッキーだったのは、コストコの店舗が座間市内にあったことだ。コストコが本拠を置く米国でフードバンクは一般的で、米国の店舗がフードバンクに食品を提供することも頻繁にあった。それゆえに、フードバンクに理解があったのだ。

 その後も、他の地域のフードバンクに食料品を提供してもらえる小売り店につないでもらったり、地元の市議会議員に地域の店舗の店長を紹介してもらったりと、あの手この手で提供元を増やした。その結果、コストコやダイエーのような大手小売りだけでなく、らでぃっしゅぼーややオイシックスといった食材宅配大手などから食料品や食材の提供を受けることが可能になった。

 食料品には消費期限や賞味期限があり、その期間の中で食べてもらう必要がある。ただ、ワンエイドに集まる食料品には、コメや缶詰のような保存の利くものから野菜のような生鮮食品まで様々なものがある。

 しかも、フードバンクを運営している以上、いただいた食料品を余らせて廃棄する事態は避けなければならない。それだけに、しっかりと管理する必要がある。

 実際、ワンエイドの事務所を覗くと、パーティションの向こうが倉庫になっており、「202 2年4月」などと年月が書かれたダンボールが並んでいる。その中に、集めてきた食料品を振り分け、管理していくのだ。

■「調理不要な食品を」車上生活者やホームレスにも配慮

 膨大な食料品を管理するため、ワンエイドの事務所の他に、プライムが所有する近所のワンルームアパートも倉庫として活用している。ここのダンボールには賞味期限が長い食料品が入っており、月に数度、ダンボールを入れ替えてワンエイドに運び出す。

 実際にスタッフが作業している様子を見たが、天井まで山積みになっているダンボールを入れ替える作業は巨大なテトリスのようだった。

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包装しなおすなどひと手間も