このワンルームはアパートを借りることのできない困窮者のためにプライムが用意したものだ。前の入居者が部屋を汚したままいなくなり、原状回復のための費用もなかったため、そのまま倉庫として活用しているという。
また、実際に食料品を渡す時も、ただ渡すだけでなく、相手の状況に応じてきめ細かく対応している。
例えば、年金生活者は自宅で暮らしており、電気やガスなどのライフラインが整っている。ただ、火の不始末を避けるため、ガスコンロの使用を止めるよう、家族から言われている人も多い。そういった高齢者に調理に火が必要な素材を渡しても意味がないため、電子レンジで調理可能な食品が中心になる。
一方、車上生活者やホームレスは電気やガスなどのライフラインそのものがないため、調理のいらない食品を渡す必要がある。コメを配るにしても、水で戻して食べられるアルファ米でなければならない。
それに対して、山本のような子どもを抱える困窮世帯は、ライフラインを維持するために食費を削っているケースが多く、コメや味噌、野菜などの素材をそのまま渡すことができる。
ただ、企業のブランド名がついたパッケージに入ったままだとフードバンクでもらった食材だということが周囲にバレてしまうため、その場合も改めて包装し直すなどひと手間を加えている。
■「追い返すわけにはいかない」市外の相談者にも応じる
コロナ禍の影響もあり、フードバンクの利用者は増加の一途を辿る。
コロナ前にフードバンクを利用していたのは100世帯ほどだったが、2020年5月以降は300世帯を超えている。高齢者やひとり親家庭だけでなく、派遣切りで会社のアパートから追い出された人や自営業者など、コロナ前には普通の生活を送っていた人も数多い。
「山形や岐阜、大阪からも困窮者が来ます。先日も、新宿から歩いてきたという人が来ました。座間と関係ない? でも、追い返すわけにもいかないでしょう」
新宿から歩いてきたという困窮者は、食料品を分け与えた後、生活援護課に連れて行った。この時はワンエイドが住居を探し、生活保護の申請につなげた。
生活保護法には居宅保護の原則があるが、生活保護を受給していなければ、なかなか大家は物件を貸してくれない。このジレンマを解決するため、ワンエイドやプライムが物件を借り、困窮者に転貸することもある。チーム座間は、困窮者を見捨てない。
衣食住のうち、食と住は人間が生きていく上で基本になるものだ。それだけに、支援サービスを提供しているワンエイドには、次々と困窮者が訪れる。