安仁屋宗八は沖縄出身のプロ1号選手。プロ通算18年で119勝124敗。巨人戦は34勝38敗、勝率.472だった。サイドスローからの沈むシュートとスライダーのコンビネーションを武器にした。68年に23勝をあげ、広島初のAクラス入りに貢献した。119勝中、34勝(29%)が巨人戦だった。その割合からは、「紛れもない巨人キラーだ」といえるだろう。
岡山・倉敷商高出身で星野仙一の1年後輩だった松岡弘は、岡山東商高で甲子園優勝経験のある平松政次、65年に東映(現・日本ハム)にドラフト1位指名された関西高・森安敏明と同学年。この年代は岡山県に好投手が多かった。松岡を評して長嶋茂雄いわく「球が一番速かった」。プロ通算191勝190敗。通算200勝までもう少しのところで涙をのんだ。ヤクルトのエースナンバー「背番号17」と「巨人キラー」の代名詞は、川崎憲次郎(巨人戦29勝)に受け継がれた。巨人戦の成績は34勝46敗、勝率.425だった。
広島時代に6年連続10勝をあげた川口和久は巨人戦で33勝31敗、勝率.516。3度の最多奪三振、6度の最多与四球、そして荒れ球が武器だった。広島初のFA選手でもある。巨人時代の96年、11.5差を大逆転した「メークドラマ」では胴上げ投手になった。
石川のストレートの最速は130キロ台だが、シンカーをはじめとした多彩な球種で打者を手玉に取る。巨人戦33勝目(30敗、勝率.524)で通算182勝をあげた。「平成の大エース」と呼ばれた巨人の斎藤雅樹が通算180勝、「平成の怪物」松坂大輔が日米通算170勝。現在、パドレスのダルビッシュ有が日米通算181勝、楽天の田中将大が日米通算186勝ということを考えても、石川は身長167cmの「小さな大投手」である。
紹介した「巨人キラー」のなかでも勝ち越しているのは平松、星野、川口、石川の4人だけだ。「真の巨人キラー」とは、この4人のように巨人の強打者を抑え、また巨人の強力投手陣にも勝つ投手のことを言うのだろう。(新條雅紀)