ただ、ボクとHIRO君はお笑いの知識がまったくないわけだから、当然、「ツッコミ」は団長ということになる。漫才やコントで最もセリフが多いし、ボケへの誘導なんて、ボクとHIRO君にはできないからね。

 じゃあ、ボクとHIRO君の役割はどうなるのか。残されたのは「大ボケ」と「小ボケ」。いったい、どちらを「大ボケ」にしたほうがいいのか。これが冒頭の団長のセリフにもつながる。つまり、団長はこの選択を、一時かなり悩んでいたんだよね。

「あんなデカい身体しているやつはそうそういないからHIRO君がいい」
「いやいや、あんな声の高いやつ見たことないからクロちゃんだ」

 先輩芸人や作家さんにアドバイスを求めても、意見は真っ二つに分かれた。

 だから、団長は余計に悩んだんだろうね

 ボクはといえば、それについて、最初は、あまり深くは考えていなかった。ただ、HIRO君と比べられるような日々が毎日のように続いたせいで、ボクの意識もだんだん変わっていった。

 漫才やコントで、目立つのはやっぱり「大ボケ」。「小ボケ」はどうしてもフリに使われてしまうことが多い。それに、「大ボケ」のほうが花形っていうイメージも強かったし、「大ボケ」に選ばれたほうがなんとなく「勝ち」っていう見方も周囲からはけっこうされていたからね。

「HIRO君に負けるなんて絶対嫌だ」
「大ボケはボクがやるべきだ」

 ボクの中で、そんな風な思いが強くなっていった。

 正直、自信もあった。

 ボクは子どもの頃から、「面白い」と言われることが多かったからね。

 例えば、足の裏を鍛えるために、はだしで学校に登校してみたり、給食の時間になると教室の後ろにいってクラスメートの前で歌を歌ったり、ワイシャツの長袖が嫌いだから袖をビリビリに破いてタンクトップみたいにしたり、頭突きにハマっていた時に校舎の壁に何度も頭突きして周囲を驚かせたこともある。

 別に、それは、周囲を笑わせようと思ってやった行動ではないんだけど、みんなには「面白い人」という存在として認知されているのはなんとなく分かっていた。だから、のちに生徒会長にも立候補したし、「笑っていいとも」のオーディションに受けたりもしたんだと思う。

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