6月17日、JR東京駅で車いすの男性が東北新幹線のホームから線路上に転落し、救助された。ホームドアが設置されていれば防げた事故だったが、となりのJR東海の東海道新幹線ホームにはホームドアが設置されている。東北新幹線の管轄はJR東日本だ。なぜ、このような違いが生じているのか? 取材を進めると、新幹線のホームドアの設置基準は会社によってまったく異なることが分かった。
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世界トップレベルの安全性を誇る新幹線だが、プラットホームからの転落事故や列車との接触事故を防ぐホームドアの設置については、JR各社でばらつきが大きい。
比較的新しい北海道新幹線と九州新幹線を運営するJR北海道とJR九州はすべての新幹線駅にホームドアを設けている。一方、ほかのJR3社の新幹線ホームドアの設置状況と設置率は以下のとおりである。
JR東日本は39駅(臨時駅のガーラ湯沢駅を除く)中15駅(設置率約38%)、JR東海は17駅中7駅(同約41%)、JR西日本は23駅中8駅(同約35%)。
なぜ、ホームドアのない新幹線駅があるのか?
JR3社に尋ねると、以下の回答が返ってきた。
・JR東日本「省令等に定めのある『ホームを高速で通過する列車がある駅』を中心に15駅に設置しております」
・JR東海「乗降客数等を考慮し、のぞみ停車駅への可動柵設置を進めています」
・JR西日本「乗降10万人以上の駅、ならびに転落・接触の多い駅、すべてののぞみが停車する駅を優先してホーム柵整備を進めています」
つまり、ホームドアの設置基準は各社ばらばらで、特にJR東日本は「通過列車」対策としてホームドアを設置しているのに対して、他の2社は「のぞみ停車駅」を優先しており、正反対といっていいくらい設置理由が異なる。
なぜ、このようなことになっているのか? 国土交通省鉄道局技術企画課に尋ねると、新駅についてはホームドア設置が原則、義務づけられている一方、既存駅については努力義務であり、統一された設置基準はなく、JR各社にまかせられていることが分かった。