野球に限らずこれくらいの範囲であれば他県の高校へ進学することは全く珍しいことではない。前述した中田や根尾のような目立つ選手がいるからということもあるが、そういう選手だからこそ自分に合った環境のチームを狭い範囲ではなく全国から選ぶというのは至極真っ当なことと言える。

 具体的な学校名を挙げることは避けるが、逆にここで挙げたチーム以上に他県から選手が入学していながらも、甲子園で勝ち上がることができていない学校も数多く存在している。選手を集めただけでは勝てないというのは、ある程度高校野球に精通しているファンの間でも常識となっているのだ。

 また、私立だから選手を集めることができて不公平だという声も多く聞かれるが、一部の公立高校では私立以上に中学時代に有望だと言われた選手が入学しているケースも少なくない。また練習場などの環境面も、私立以上に充実している公立校も存在している。県内の選手だけで構成されたチームが勝ち進んだとしても、「この県のいい選手はみんなそのチームに集まる」という批判の声も聞かれる。

 結局は何をしても勝てば叩かれるというのが世の常と言うことではないだろうか。他県の高校への入学を制限した方が良いのではないかという声も聞かれるが、最も全国各地に有望選手を供給しているのは大阪を中心にした近畿圏であり、そういった制限をかければ逆に大阪桐蔭、履正社、智弁和歌山といった近畿の強豪校がさらに強くなる可能性も高いだろう。

 近年では地方では過疎化が進み、公立高校であっても県外から生徒を募集するケースが増えている。選手の進学に対してお金を要求するようなブローカー的な存在が出てくることは当然問題だが、そうでないのであれば選手がより良い環境を求めて遠方の高校へ入学することは決して悪いことではないだろう。地元の選手が少ないから応援する気になれないという声も聞かれるが、人口が減っている地方にとっては、高校の3年間だけでもその地で生活するだけであっても、関係人口が増えることはむしろ喜ばしいことと言える。

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野球の競技人口を増やすためには…