落合が率いた中日は、みずからが現役時代3度の三冠王を手にしたのとは対照的に「守り勝つ野球」を掲げた。その結果、04年から10年までの7年間でリーグ優勝が3度、日本一が1度、すべてがAクラス入りだった。

 11年8月3日、中日は首位ヤクルトに10ゲーム差をつけられていた。9月22日に球団から11年限りでの落合監督の退任が発表される一方で、チームは10月6日に首位に浮上。10月10日からのナゴヤドームでの首位決戦でヤクルトに4連勝し、8年間で4度目のリーグ制覇となった。退任が発表されても泰然自若の采配を振るった落合監督に、周囲は「これぞプロの指揮官」と評価した。その年、浅尾拓也はMVPと最優秀中継ぎ(52ホールドポイント)、吉見一起は最多勝(18勝)と最優秀防御率(1.65)、最高勝率(.857)、ゴールデングラブ賞に浅尾と谷繁元信、大島洋平が選ばれた。

 16年はソフトバンクが黄金時代突入の様相を呈しており、15年の栗山英樹監督率いる日本ハムは首位と12ゲーム差の2位に終わった。16年も一時はソフトバンクに11.5ゲーム差をつけられたが、6月半ばから15連勝し、9月22日に優勝マジックを点灯させ、28日にリーグ優勝を遂げた。MVPに輝いたのはプロ4年目の大谷翔平だった。投手として10勝、打者として104試合104安打、打率.322、22本塁打、67打点という成績だった。投手陣では有原航平、高梨裕稔(新人王)、増井浩俊が2ケタ勝利を挙げ、宮西尚生が最優秀中継ぎ(42ホールドポイント)を受賞した。打撃陣では中田翔が打点王(110打点)、レアードが本塁打王(39本)、西川遥輝と大谷、中田、レアードがベストナイン、大野奨太と陽岱鋼、中田がゴールデングラブ賞に輝いた。

 以上のように、7月時点で10ゲーム差があっても大逆転は可能なことを過去の例が実証している。11年の中日は落合監督の勇退が関係していた。1958、63年の西鉄は稲尾、2016年の日本ハムは大谷というスーパースターの存在があった。22年の阪神は矢野監督の勇退、投打の柱に青柳晃洋、大山悠輔がいる。期待したいところだ。(新條雅紀)

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