
それに対して、いのうえさんは「つまり、お互いに利益があるわけです」と語る。
なぜか。背景には選挙を巡る集票構造の変化があるという。
「かつて議員に立候補する人は、その地域の名士が多かった。『いつもお世話になっているから』と、地域のみんなが議員を応援する。当時は金をばらまかなくても票が集まりました」
ところが、高度経済成長期に入ると、地方から都市部へ若者たちの流出が始まり、地域に根ざして票を集めてきた基盤が崩れていった。
実にうまく入り込んだ
いのうえさんの夫の母親は地方の自民党県連で長年要職を務めていたこともあり、自身も選挙の裏側を間近で見てきた。
「義理の母は選挙のたびに地域のボス的な人に裏金を配って票を集めてきました。ところが、それでも票が集まらなくなってきた。公職選挙法の取り締まりも厳しくなり、金をまけば捕まるようになった。義理の母も逮捕されたことがあります」
地方にとどまらず、都市部でも集票基盤が弱まっていく。そこに「旧統一教会は実にうまく入り込んだ」といのうえさんは言い、こう続ける。
「教会は信者に〇〇候補をお願いします、と投票を促す。そして、本当に素直ないい子たちが一生懸命に選挙のビラ配りとかをしてくれるわけですよ。しかもタダで。それは選挙をする側にとってはとてもありがたいことです」
この選挙支援について教団広報部に確認すると、こう回答した。
「宗教法人として組織的にある特定の政党や候補者を応援することはありません」
億単位の金をむしりとる
いのうえさんによると、旧統一教会は批判を浴びてほとんど手を引いた霊感商法に代わる新たな金の収奪方法を編み出した。そして、さまざまな議員に接近するようになった。特にその動きが顕著になったのは、2000年以降という。
また、いのうえさんがかつて取材した脱会者の話によると、教団が青年信者をボランティアとして選挙事務所に送り込む目的は、議員の支援者名簿の入手や、議員とつながりのある富裕層をリストアップすることだという。