なぜ感染者らに対する追試を廃止したのか。東大に尋ねると、

「進学選択制度において学生間の成績の公平性を厳密に担保する必要がある」

 と強調する。

 教養学部が在学生向けに出した通知によると、廃止した最も大きな理由として、<(コロナの)虚偽申請をした学生が学修時間をより多く確保した上で、通常の定期試験同様に100点満点で評価される機会を得る><この状況は、進学選択制度の前提となる成績の公平性を確保する上で大きな課題である>と説明している。

 教養学部のこの対応によって、今後の進路に何かしらの影響が出るとみられる学生は、Aさんだけではない。

 東京大学教養学部学生自治会の調査によると、今回の定期試験の追試がなくなった学生が、少なくとも27人確認できた。21人がコロナに感染し、5人が濃厚接触者、1人は疑似症状のため欠席。そのうち「進路選択に影響が出るだろう」と答えたのが12人、そのうち2人は「留年するだろう」と答えた。

 学生自治会にもこんな声が届いていた。

 文科3類・2年生<(試験当日に)コロナか風邪か判断がつかず迷ったが、症状がある場合は出席を控えるよう大学から要請されており、公共交通機関の利用は控えるべきだと判断し、試験を欠席した。二つの教科について成績は0点。人気の学科に進むことが難しくなり、他の進路を選ばざるを得なくなってしまった>

 理科1類・1年生<家族を通じてコロナに感染。人気の高い学科にいくことを念頭に、高い平均点を取るために努力していたが、5科目が上限75点の追試になってしまい、80点台などの平均点を目指すのは非常に難しくなった。自主留年して、来年度に100点を上限とした試験に臨むこともいとわないとの気持ちだったが、家庭の事情などで授業料のことを考えると……>

 学生自治会長の長谷川恭平さんは「留年したり、成績が悪くなったりすれば、奨学金を打ち切られる学生もいる。問題は深刻だ」と訴える。

コロナに感染した場合の代替措置の継続を訴えるビラ
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コロナでの欠席の報告が遅れて補講認められず