摂食障害の兆候に気づいたら、まずは養護教諭やスクールカウンセラーなど、信頼できる専門家に相談することが大切です。

 また、自傷行為や万引きなどの問題行動をともなうことも少なくありません。患者の不安などが食行動に現れる病気なので、治療には心理面のサポートが不可欠です。

『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より
『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より

【原因】

 摂食障害の発症の原因については多くの研究が進められていますが、明らかな病因はまだ十分には解明されていません。原因は一つではなく、もともとの性格や、生まれ育った環境、ストレスなど複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

 背景には、「痩せた細い体こそが美しい」とする偏った美意識や、やせることを過度に奨励する社会的な風潮があります。やせるためにダイエットを始めたことが、発症のきっかけになることも珍しくありません。

 また、スポーツ選手が、記録を伸ばすために減量(拒食)に励むうちに、過度なやせに至ることもあります。

イラスト/タナカ基地 『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より
イラスト/タナカ基地 『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)より

【症状】

 摂食障害はタイプごとにさまざまな食行動の異常や、症状が現れます。小学校から中学校はほとんどが「神経性やせ症」ですが、幼児期や小学校低学年では「回避・制限性食物摂取症」にも注意する必要があります。高校から大学にかけて神経性やせ症はさらに増えますが、「神経性過食症」なども増加し、多くを占めるようになります。

● 神経性やせ症

 極端に摂取カロリーを制限することでやせていきます。初めは食事制限や運動でやせていくものの、途中から約半数の患者は過食や嘔吐、下剤の乱用などが始まります。太ることに対する恐怖感が強く、やせすぎて危険な状態なのに、本人は「まだ太っている」と思い込むなどボディーイメージの障害が生じ、さらに制限しようとします。

● 神経性過食症

 神経性やせ症と同じように、やせたい願望や肥満に対する恐怖が強く、体重・体形が自己評価に強く影響するといった特徴がありますが、神経性過食症の場合は「自分ではコントロールできずに大量の食べ物を食べる」という行為を繰り返します。一気に大量の食べ物を食べたあとに、体重が増えないように食べたものを吐き出す、下剤を乱用するなど、代償行為をするのも特徴です。

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食べることを繰り返す過食性障害も