芸歴32年、いま、お茶の間の記憶に残る男として、TV出演急増中の芸人・チャンス大城(本名:大城文章)さん。そんなチャンス大城さんが自らの半生を赤裸々に語り下ろした『僕の心臓は右にある』について、芸人さんはもちろん、超有名タレント、超有名ミュージシャン、プロレスラー、作家、マンガ家さんなど、プロの方々からの絶賛ツイートが続々と上がっています。本書から、三流と一流の不良とのエピソードを一部抜粋、編集して紹介します。
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中2でTという不良が転校してきてからは、本当に辛い毎日を送ることになりました。
Tは尼崎でも不良の巣窟として名高い、N中からの転校生でした。N中は「U3兄弟」と呼ばれる有名な3人兄弟がいることでも知られていました。U3兄弟はいわば、尼崎の不良界におけるスーパースターのような存在でした。
そのN中から僕のいたJ中に転校するということは、いわば読売巨人軍から草野球のチームに入ってくるようなものです。
僕たちは、TがN中から転校してきたというだけで、Tに一目置かざるを得ませんでした。そしてTも、そのことをよく心得ていたのです。
Tは転校してくるなり、こう豪語しました。
「オレな、N中のUとは友だちや」
あの不良界のスーパースターと「知り合い」ではなく、「友だち」だというのです。
僕たちはそれを聞いて完全にビビッてしまいました。そして僕は、よりによってこのTという男に目をつけられてしまったのです。
Tが転校してきてから3カ月ほどたったときのことです。
「おい、いまからUのとこ行くぞ」
とTが言うのです。
Tはそう言うなり、僕の自転車の荷台にまたがりました。前でペダルを漕ぐのは僕。
要するに僕は、Tの運転手役というわけです。
僕は自転車をえっちらおっちら漕ぎながら、N中の目の前にある長屋に向かいました。その長屋の一室こそ、U3兄弟を頂点とするN中の不良たちのたまり場だったのです。
Tに連れられてたまり場に入っていくと、N中の幹部がせいぞろいしていました。当時、僕と同じ年のU君(U3兄弟の末っ子)が番長でしたが、まだU君は来ておらず、副番長がその場を仕切っていました。