その後、高所にある平均台を60秒以内に渡り切るという企画では、恐怖のあまり鳥のように甲高い奇声をあげながらも、何とか時間内に渡り切ることができた。

 さらに、淳は有吉らと共に『テレビ千鳥』の人気企画「1周だけバイキング」に挑んだ。バイキングでどんな料理をどのくらい取ってどう盛り付けるのか、そのセンスを競う企画である。

 ここで淳は「辛いのは味覚じゃない。辛いものを食べてうまいと言う人は舌が馬鹿になってる」「抹茶塩をあんまり信用してない」「立ち上がるほどうまいチャーハン、バイキングであったことない」などと、悪口やネガティブな発言を連発して、ほかの共演者をあきれさせた。

 さらに、できるだけたくさんの種類の料理をほんの少しずつチマチマ取っていくという立ち回りを見せ、これも不評だった。ノブが「つまみ食いだ」と言ったのに続いて、有吉は「女子もそうなんだよ」と付け加えた。バイキングでの料理の取り方に女性に対する扱い方が表れているという指摘には、うなずく視聴者も多かったのではないか。

 審査員の博多華丸は淳について「とにかく口が悪い」と酷評し、料理を選り分けるようなトングの使い方にも苦言を呈した。この番組では、運動神経のような外から見える部分だけではなく、内面についても厳しい評価を下されていた。

 淳クラスになると、普段は番組を仕切る立場なので、自分がイジられる側に回ることが極端に少ない。だが、こうやって特番でほかのMC芸人と横並びになってみると、淳はイジられ芸人としても突出した才能を持っていると言わざるを得ない。

 目的のためには手段を選ばず、目的に向かって最短距離を突き進む合理主義者の彼は、目的以外のところが全部すっぽり抜けている「おとぼけ天然野郎」でもあるのだ。世が世なら、淳は狩野英孝や出川哲朗に匹敵するような「イジられ芸人のカリスマ」になっていたかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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