明仁天皇も女王に喜んでもらうために、綿密な準備を重ねた。皇居にある三の丸尚蔵館には、国宝級の美術品が保管されている。絵巻物など貴重な美術品をこのとき、英国に運んだ。それらは答礼晩さん会の会場となった博物館に展示された。

「答礼晩さん会の始まる前に、天皇陛下は女王に、熱心に美術品の説明をなさった。女王もうなずきながら熱心に聞いておられました」(多賀さん)

 明仁天皇は、日ごろから御所で「The Times」など英国の新聞にも熱心に目を通していた。

 英国王室がメディアにどう書かれているのか、国民と王室がどのような関係にあるのかを、熱心に把握しようとなさっていたのではないか、と多賀さんは振り返る。

 皇室の国際親善は、親しい友人との交流の場である。

「ベルギー王室のように、家庭的で気の置けない交流がある一方で、あたたかなもてなしを受けながらも、緊張感を含んだ交流もあります」(多賀さん)

 令和の天皇陛下と皇后雅子さまは、おふたりとも英国留学の経験があり、英国人とのつき合いも心得た部分もあるだろう。エリザベス女王の国葬のための訪問は、同時にチャールズ新英国王とカミラ王妃との新しい関係が始まる旅となるだろう。

(AERA dot.編集部・永井貴子)

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