「そんなこと、考えてもみなかった」という人も多くいますが、「おかあさん(おとうさん)、しっかりしてよ」という言葉が出るようになったタイミングは、老いの始まった親とあなたの立場の逆転のスタートの時期でもあるのです。

■これまでどおりの親であってほしいが…

 親と子ども(あなた)の立場が逆転するとは、どういうことでしょうか。

 これまでは、親はあなたを見守り、世話し、保護してくれる存在でした。一方、あなたは親の庇護(ひご)と慈愛のもとに成長してきました。しかし親の老いが始まると、その構図が逆転し、あなたが親を見守り、世話し、保護し、さらに親の老後の生活を一緒に考えてあげる立場になるのです。

 もちろん、「しっかりしてよ」で済むような段階では、親はまだまだ元気で、日常生活に支障をきたすようなことはありません。遠出もできるし車の運転もこれまでどおり。お金の管理もしっかりしていてATMも問題なく使えます。そばで見ていても「老いた」という実感はそれほど強くないでしょう。

 そもそも「老い」まではいかなくても、親の変化を感じるのは、日常生活のちょっとしたことからだと思います。同居・別居の違いはありますが、どちらもふとしたときに、「おかあさん、やり方が雑になっている」「おとうさん、いつもやっている簡単なことが、さっとできなくなっている」などに気がつきます。家族だけの場面ならいいのですが、たとえばお盆やお正月、法事などで親戚が集まったときにこの事態が起こると、あなたはイライラします。

 親は親で、自分はいつもどおりやっているのに、やたらと子どもに責められ、しかも人前だとなおさら腹立たしく頑固になって、あなたのアドバイスを聞かないということもしばしば起こります。そして最後は、「もう、おとうさん(おかあさん)の好きにさせましょう。どうせ言っても聞かないんだから」「良かれと思って言っているのに。もう知らない! 一切、かかわらないからね」などと言って、気まずく別れるのもめずらしくありません。

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もう親はかつての頼れる存在に戻れるわけではない