このような段階で、立場の逆転が始まると言われても、ピンとこないのが普通かもしれません。その気持ちの裏には、これまでどおり、おかあさんはキレイ好きでしっかりもの、おとうさんは強くて人生の行くべき道を指し示してくれる、二人とも頼れる存在のまま変わらないでいてほしい、あなたが叱咤激励すれば、いつものおとうさん、おかあさんに戻るはず、という願望が隠れているのでしょう。

 しかしあなたの期待に反して、「しっかりしてよ」を口にする機会は徐々に増えてきます。もう親はかつての頼れる存在に戻れるわけではなく、親自身は自分でなんとかしたいと思いながらも、さまざまなことができなくなっていきます。それを「しっかりしてよ」とあなたが要求するのは、むしろ酷なことともいえます。

■親に甘えるのはおしまい、親を支える立場に

 この時期をきちんととらえて、この先に予測される親の介護に対して気持ちのうえで準備をしておくことが、親にとってもあなたにとっても、納得のいく老後の生活を送るカギになると思います。

「しっかりしてよ」「たのむよ」が口をついて出たら、これからはあなたが親を世話し、支える立場になったことを自覚しましょう。

 いまはまだ見守る程度で大丈夫でしょう。しかし時間がたてば確実に親の老いは目に見えるものになっていきます。それに伴って、あなたは、親の人生を決めるいろいろな決断を強いられることになります。たとえば、一人暮らしの継続の可否、介護保険の申請、施設入所の検討、さらにはターミナルケアをどうするかなど。実際に介護が始まると、親子の関係性の逆転は、より堅固なものになっていきます。

 こうしてみると、子どもの世話をすることと似通っていますね。保育園にするか幼稚園にするか、習い事はさせるか、塾に通わせるか、学校は私立にするか公立にするかなど、子どもの希望や意思を尊重しながら、将来に向けて最善の道を歩ませるために親が決めてくれていたことを、今度はあなたが親にしてあげる番なのです。

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「しっかりしてよ」は自分自身が受け止めるべき言葉