――本の感想は、ご覧になりますか?

 見ていますね。Twitterでフォローいただいている方はご存知かと思うんですけど、私、エゴサの鬼なので(笑い)……本当に励みになります。ありがとうございます

■「多様性」は、書き手側が意識して生んでいかないと出ない

――本作についてお伺いしたいと思います。『人間みたいに生きている』は、食べる行為そのものに拒否感を覚えている高校生の唯さんを主人公にした小説です。食について書いていただきたいという連絡をしたら、『元々、書きたいと思っていました』とお返事いただいたことを、すごくよく覚えています。どういう経緯で書きたいと思ったのか、教えていただけますか?

 元々、「過食と青春」というお題をいただいていまして。最初は食べすぎちゃうっていう内容の依頼だったんですけど、それより拒食症、食を拒む方に興味があるなと。

 以前バラエティ番組を見ていたとき、偏食で有名な俳優さんが出ていらして、彼の偏食をグルメな大御所さんが治す、みたいな内容でした。その俳優さんは潔癖症の一面も持っていらして、「手ごねハンバーグが食べられない」って言うんです。それに対して大御所さんが「お前はまだ、本当に美味しい手ごねハンバーグを知らないんだ」などと言って、いろんなお店に連れて行って食べさせる……。スタジオ全体の雰囲気は、偏食の俳優さんの方が悪くて、グルメの大御所さんが「正しい治療をしてあげている」という感じでした。

 でも結局、最後までその俳優さんは折れなかったんですよね。「美味しいと思う人はきっと美味しいだろうけど、僕はそう思わないです」みたいな。その言葉を聞いて、何を自分の体内に入れてどう生きていくかということは、すごく個人的なことのはずなのに、食には、はっきりと「いい・悪い」が決められているんだなって思ったんです。

 小説の「多様性」って多分、書き手側ががんばって意識して生んでいかないと出ないと思っているので、そういう意味では「食」で新たなものを書きたいと思っていました。

――主人公の唯さんが吸血鬼の館に侵入した時に、そこで出会った泉さんと本の話で盛り上がって、初めて心を通わせる体験をするというのが、最初の印象的なシーンだと思います。佐原さんは高校生時代、どのような読書体験をされていましたか。

「誰かを崇拝しすぎると、本当の自由は得られないんだぜ」みたいなことをスナフキンが言っているんですけれど、私には崇拝している2大神がいまして(笑い)。「女による女のためのR18文学賞」で受賞された豊島ミホさんと、詩人の吉原幸子さん。ほかにも、恩田陸さんの小説はすごく読んでいました。そもそも少女小説が好きなので、コバルト文庫は読んでいました。

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