「食べることは幸せ」と思えない私は、欠けた人間なのだろうか——。
食べることそのものに嫌悪感を抱いている女子高生の三橋唯。はじめて自分の居場所を見つけたのは、食べ物の臭いが一切しない「吸血鬼の館」だった。
こんなセンセーショナルな文字が帯に書かれた、小説『人間みたいに生きている』。9月17日(土)に大盛堂書店(東京・渋谷)にて、著者・佐原ひかりさんの発売記念トーク&サイン会が行われた。文字をしっかり追いながら理解し、ストーリーを自分の中に取り込もうとする力をもった読者で会場は即満員に! 担当編集者の宇治田からの質問に、涼やかな笑顔を見せながら、丁寧に話す佐原さん。その模様を、特別に一部公開する。
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――今日は「佐原ひかりさんの『人間みたいに生きている』のトークイベントにお越しいただきまして、本当にありがとうございます。担当編集の宇治田と申します。私から質問しながら、イベントを進めさせていただきます。
皆さんはじめまして、佐原ひかりと申します。本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。最前列に座っている方々は基本的に目が合うと思っていただきましたら。横にも広がってくださって、馬の視野みたいな感じですね(笑い)。満席で、隅まで座っていただいて、本当にありがとうございます。
■担当編集者との打ち合わせ時は、親に1000円を渡して……
――佐原さんは昨年の6月に『ブラザーズ・ブラジャー』でデビューされて、7月には『ペーパー・リリイ』を刊行。今回の『人間みたいに生きている』で3作目になります。デビュー後の短い間に作品を多数発表されていますが、その間、環境とか心持ちとかに変化はありましたか?
環境で言うと一番大きいのが、神戸の実家を出て、京都で1人暮らしを始めたことです。佐原ひかりという筆名を親に明かしていなくて、実家で書く環境を整えるのが結構限界になってきたので。担当編集者さんとの打ち合わせの時は親に1000円渡して、その時間だけ外出してもらっていたんですけど、段々、時間もお金も馬鹿にならなくなってきて……それでは実家を出ようかな、と。今は、京都で1人暮らしをしながら小説を書いています。
心境の変化はなんだろう……今までは自分が考えたことなどを出したい時だけ文字や原稿にして出していたんですけど、現在は読んでくださる方がすごく増えたっていうのもあって。やっぱり読まれるっていうことをすごく意識して書くようにはなりましたね。