■竈門炭治郎の「日輪刀」

 炭治郎は水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)の導きによって、元・水柱の鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)から、剣術と体術の指南を受けた。コミックス1巻・第4話で炭治郎の説明とともに描かれている刀は、おそらく鱗滝から借りたものだ。これには、柱の日輪刀に刻まれている「惡鬼滅殺」(あっきめっさつ)の文字はなく、通常の刀であると思われる。2巻で炭治郎がはじめてもらう日輪刀にも刻まれていない。

「この刀の後から階級制度が始まり 柱だけが悪鬼滅殺の文字を刻むようになったそうだ」(鋼鐵塚蛍/15巻・第129話「痣の者になるためには」)

注※セリフ中では「悪」の表記 
注※「この刀」=刀鍛冶の里で手にする新しい炭治郎の刀。300年以上前のもの。

 炭治郎は激戦のために、何度か日輪刀を破損・紛失し、そのたびに自分の日輪刀の制作者である、鋼鐵塚蛍(はがねづか・ほたる)から厳しく叱責されている。しかし、炭治郎はもともと「水の呼吸」の使い手である。のちに「ヒノカミ神楽」を使うようになった彼の日輪刀にも、変化が必要だったはずだ。そんな時に、刀鍛冶の里で、炭治郎は「新しい日輪刀」と出会う。

※以下、放映予定の「刀鍛冶の里編」の内容が含まれます。ネタバレにご注意下さい。

■刀鍛冶の里での「事件」(1)

 遊郭での戦いの際に、日輪刀を刃こぼれさせてしまった炭治郎は、鋼鐵塚から「お前にやる刀はない」と言われてしまう。新しい刀も届けてもらえなかった。炭治郎は鋼鐵塚と直接話をするため、刀鍛冶の里に出向くが、そこでいくつもの事案が重なって、300年以上前に実在したという天才剣士を模した「カラクリ人形」と戦闘訓練を行うことになった。

 刀鍛冶の少年・小鉄の助力もあり、炭治郎の能力はさらに覚醒する。とうとう炭治郎が「カラクリ人形」に勝ったその瞬間、その人形の「体内」から、1本の日輪刀があらわれた。神話的物語において、「英雄」の条件のひとつである、「入手困難な剣」を炭治郎が手にした瞬間だった。この「天才剣士のカラクリ人形」に勝つことは、炭治郎にとって通過儀礼としての意味を持つ。さらに、この「剣」の持ち主は、炭治郎の祖先、炭治郎の耳飾りとも関係していた。

 一見、唐突とも思える「カラクリ人形」の描写であるが、このカラクリ人形のモデルとなった剣士と竈門家の縁、「強い者」を倒すことで手に入れられる「最強のアイテム」というエピソード、そして、その剣が「体内」から出てくるところに、強い神話性が感じられる仕組みとなっている。これらは鬼滅の作者・吾峠呼世晴氏の周到な「仕掛け」であるといえよう。

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「血」と「技術」の継承