さらに、韓国国内におけるK-POPの扱いに対しても、複雑な国民感情があるようだ。

「K-POPアーティストは基幹産業&輸出産業と位置づける国策の恩恵にあずかっており、兵役義務に対して不満を口にすることはなおさらはばかられる“空気”があります」

 有識者、ファンのみならず、国会議員までもがさまざまな意見を口にする中、BTSサイドが自ら兵役免除を望むようなコメントは発せず、終始、受け身の対応に追われたのもこうした事情があったからだろう。

 とはいえ、近年は世界的に存在感を放っている韓国の芸能コンテンツが、国内では「大衆文化」としていまだ低く見られているのはなぜか。韓国の芸能事情に詳しい芸能ライターはこう解説する。

「韓国の芸能コンテンツ自体は、国策としての後押しもあり、時代の最先端を意識しています。ただ、韓国国内の芸能界に目を向けると、米国や日本と比べてシステムや環境はかなり遅れている印象です。いまだに裏社会との関係性がささやかれ、いわゆる“奴隷契約”もなくなっていない。人気タレントの“謎の自殺”も後を絶ちません。そうした背景があり、成功している芸能人の評価もそこまで高くならないのです」

 例えば、昨今日本で物議を醸している世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と芸能界の関係も取り沙汰されたことがある。2011年、日本でも人気を集めた女性グループ「少女時代」が旧統一教会の拠点である天宙清平修練苑で開催された信者向けのイベント「清心ミュージックフェスティバル」に出演し、トリを務めたことが話題となった。

「旧統一教会は韓国では宗教団体というよりも経済団体や財団のような認識が強いとはいえ、これが日本であれば、トップアイドルグループが宗教や政治色が強いイベントに出演することはあり得ません。それが韓国芸能界では“金さえもらえればOK”といった風潮がいまだに根強く、宗教や政治絡みどころか、“反社”のような団体のイベントにも平気で人気芸能人やアーティストを出演させたりもします」(同)

 もし人気アーティストの兵役義務の免除を目指すのであれば、芸能界のクリーン化、芸能人の地位向上が不可欠となりそうだ。

 もっとも、あのBTSをしても兵役の「免除」までは至らなかったという事実が、今後、K-POPアーティストたちの前に高い壁として立ちふさがることになりそうだ。(立花茂)

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立花茂

立花茂

東京都出身。大学を卒業後、スポーツ紙の芸能記者として活躍。その後、週刊誌や月刊誌、ニュースサイトなどでも記事を執筆。得意ジャンルは芸能だが、取材対象はアニメ、競馬、プロレスなど多岐に及ぶ。最近はweb3.0にも興味あり。

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