骨粗鬆症性椎体骨折

 骨粗鬆症性椎体骨折は骨粗鬆症患者数に比例し、60代後半以降の女性に多い。男女比は1:3だ。80歳以降になると男性の割合も増える。超高齢化の進む近年は男女差が縮まりつつあるという。

 健康な骨は常に代謝し、骨を溶かす骨吸収の過程と骨を作る骨形成の過程が繰り返されている。加齢でこのバランスが崩れると、骨形成が骨吸収に追いつかなくなり骨量が減少する。さらに骨質も劣化して骨強度が低くなった状態が骨粗鬆症だ。

「骨量の維持には性ホルモンが重要ですが、女性は閉経後にエストロゲンが減少し、男性も高齢になるとテストステロンが減少します。つまり、骨粗鬆症とは、高齢になれば誰もがなりうる状態といえます」(竹内医師)

 骨量は20歳代に最大値となり、50歳を過ぎるころから男女を問わず減少する。ただし、骨粗鬆症にはそれまでの生活習慣や遺伝的要素も影響する。

「喫煙やアルコール多飲の習慣がある人や運動習慣があまりなかった人、母親や祖母など近親者が骨粗鬆症だった人、若年時に痩せ形だった人や過度なダイエット経験者も最大骨量は少なく、発症リスクは高めです」(同)

 骨粗鬆症患者はサルコペニアを合併していることも多い。サルコペニアとは、おもに加齢によって握力や下肢筋、体幹筋などの全身の筋力が低下し、身体能力が低下した状態のことだ。背骨がいつのまにか骨折してしまうのは、骨密度の低下だけでなく、骨を支える筋力の衰えも関係している。

「骨粗鬆症でかつサルコペニアだと、骨ももろく筋力も弱いため転倒しやすく、普通の生活のなかで骨折しやすい条件がそろってしまう。よりリスクも高まります」(酒井医師)

■女性は60代後半に骨密度測定を

 80代以降になると、足の付け根の大腿骨近位部骨折のリスクも高まる。背骨の骨折よりもさらに身体活動の低下やそれに伴う認知機能障害が起こりやすく、要支援・要介護への移行リスクも高い。

「70歳前後で背骨を骨折したら、その時点で骨粗鬆症を自覚し、次の骨折の予防に向けて、骨粗鬆症の治療を始めましょう。さらに日々の運動習慣、食事での栄養への配慮も重要です」(竹内医師)

次のページ 高齢者ほど肉や魚などでタンパク質を