骨粗鬆症は自覚症状がないまま進行し、いつのまにか骨折を引き起こすという。60代後半以降の女性に多い背骨の骨折はただの腰痛と間違われやすく、治療が遅れがちだ。その症状や原因となる骨粗鬆症について専門医に聞いた。
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ある日急に腰や背中が痛くなった。足がしびれてきた。腰が曲がってきた……。こうした症状を伴い、日常生活のなかでいつのまにか背骨が骨折していることがある。加齢などによって骨粗鬆症が進んで骨がもろくなり、わずかな外力や動作で骨折してしまうのだという。
骨粗鬆症によってとくに骨折しやすくなる部位は手首の骨や足の付け根の大腿骨近位部、そして背骨の前側にある円柱状の椎体だ。60代後半からとくに増えるのは椎体の骨折だという。国立長寿医療研究センター整形外科部長の酒井義人医師はこう話す。
「骨粗鬆症性椎体骨折の約半数は転倒や尻もちなどがきっかけですが、半数は明確なきっかけがわからないままに骨折してしまうのが特徴です。痛みの程度も人それぞれで、立ち上がれないほど痛い人もいれば、軽い痛みの人もいます。痛みの範囲も、腰からお尻辺りまで、足にも痛みやしびれが出てくる場合もあり、骨折の部位、形状によってかなり症状が違ってきます」
背中の痛みがおさまらないので病院を受診すると、背骨の骨折がわかり、驚く人も多いという。
■背が縮むのは骨粗鬆症のサイン
椎体とは背骨の椎骨の円柱状の部分だ。積み木のように積み重ねられた椎骨のうち、胸椎は12個、腰椎は5個ある。椎体内部はもともと網目状の構造をしているため、骨粗鬆症でスカスカになった状態で骨折すると押し潰されるように変形する。1カ所骨折すると、周辺の骨も次々骨折することがある。原因となる骨粗鬆症について、虎の門病院副院長の竹内靖博医師はこう話す。
「女性は閉経する50歳前後から急激に骨密度が低下します。骨粗鬆症は徐々に進行しますが、『普通に転んで手首を骨折した』『それまで手の届いていた棚の上のものがとれなくなった』『身長が若いころに比べて4センチ以上低くなった』などはすでに骨粗鬆症になっている兆候かもしれません。骨粗鬆症が進むと背骨が変形し、身長や姿勢にも変化が出てきます」