サウナー用語としてよく使われる「ととのう」とは、サウナ後の休憩中に「心身ともに非常に調子がいい」と感じられる状態のこと。つまり、サウナの本当の醍醐味はサウナ後の水風呂、休憩タイムにこそある。

「最近のサウナ人気で、施設によっては、サウナ室の混雑だけでなく、水風呂が埋まっていてなかなかサウナ室から出られない、休憩の寝椅子も空かない、なんてこともよくあります。そんな状況では深いリラックスはできず、もちろん、ととのいません。快適にサウナに入るなら、できるだけ混雑を避けること。そしてやはり、行き慣れたサウナのほうがととのいやすい。行きやすくて空いている快適な施設をホームサウナに選んでください」

 サウナ室の混雑具合を情報発信しているサウナ施設や、施設の時間帯ごとの混雑傾向がわかるアプリなども登場している。加藤医師も2022年、サウナ室の混雑をリアルタイム表示できる無料アプリシステム「サの国」を開発し、一般に公開している。

 効果的なサウナ浴の1回あたりのセット数や時間はどのくらいが目安だろうか。

「個人差はありますが、自律神経の調整という観点でも1回あたり最大3セット程度でしょう。サウナの入りすぎはむしろ逆効果。毎日入る場合は1日1回までにしましょう」

 サウナに入ることは、軽いエクササイズと同程度の負荷を心血管系に与えることになる。そのため、入りすぎは心臓への負担が大きくなり、とくに初心者では逆に体調を崩すことにもなりやすいので注意が必要だ。

「私のように毎日サウナに入るような人は毎回フルセット(3セット)入る必要はなく、最短30分ぐらいしかかかりません。朝はとくに軽く1セットがおすすめです。朝ウナ(朝のサウナ浴)はからだを目覚めさせ、日中の快適性が上がり、疲れも軽減するという報告があります」

■自宅での「ウチととのい」も活用を

 忙しくて、毎週必ずはサウナに行けないという場合はどうしたらいいだろうか。

「サウナ施設に通えないという人は自宅で『ウチととのい』を試してみてもいいでしょう。疑似サウナ体験ですが、リラックスはできます」

「ウチととのい」のやり方はこうだ。

 お風呂に炭酸濃度が濃い入浴剤などを入れ、いつもの湯温より1~2度高めの約41~42度で15分程度入浴する。その後は水シャワーで20秒程度からだを冷やし、水シャワー後は水気を拭いて椅子などに横たわり、数分間休む。これを2~3セット繰り返す。ウチととのいなら、好きな音楽を流したり、アロマキャンドルを灯したりなど、自分流の楽しみ方ができるメリットもある。

「ただし、自律神経を高める効果はサウナに比べると少し弱め。サウナに行けるときにはサウナに入るのがベストです」

 健康になり、ビジネスのパフォーマンスも上がるサウナ。ぜひ習慣として取り入れてみては。

加藤容崇医師
加藤容崇医師

加藤容崇(かとう・やすたか)/ 日本サウナ学会代表理事・慶應義塾大学医学部特任助教。1983年、群馬県生まれ。北海道大学医学部卒。専門はがんの遺伝子検査とがん(主に膵臓がん)研究。第2の専門は予防医療としてのサウナの研究で、日本サウナ学会を2019年に設立。株式会社100plusも設立し、サウナ室内混雑リアルタイム表示システム&アプリ「サの国」や「ととのう」を数値化するデバイス・アプリを開発している。著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)などがある。

(文・石川美香子)

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?