「これまでは、例えばビールの値上げなど局所的な値上がりというものがありました。今回のようにスーパーの品物がほとんど値上がりするといったようなことはなかった。記録的な値上がりと言っていい」(前出の担当者)
厳しい状況ではあるが、価格を据え置きする企業もある。
総合菓子メーカーのシャトレーゼのホームページを見ると、「値上げしないことへの挑戦 お客様の安心のため、価格維持に挑戦しております。」といったメッセージを掲げている。広報室長の中島史郎さんはこう語る。
「経営判断により、無駄を削減することで、これまで通りの価格を実現することにした。物価が上がる一方で、賃金は上がらず、家計を切り詰めている家庭は多い。そのような状況で、毎日のおやつや特別な日のケーキなどでご愛用いただいているお客様のことを考えたら、簡単に値上げすることはできない。『踏ん張れるだけ踏ん張る』『来年の3月までは値上げしない』というのが、陣頭で指揮をしている会長の方針です」
市場戦略の観点から価格を据え置く動きもある。たばこ税の見直しにより、加熱式たばこは10月から各銘柄で値上がりしている。しかし、「テリア」、「ラッキーストライク」、「プルーム・エックス(オンライン販売限定を除く)」などは価格を据え置いた。「プルーム・エックス」を販売する日本たばこ産業の広報担当者は「利益は減るが、競合他社のシェアを奪取したいと考えた。また、ご愛顧いただいているお客様の負担を増やさないため」と狙いを語る。
物価高騰はいったいいつまで続くのか。先の帝国データバンクの担当者はこう見る。
「食品分野では、何度も値上げをすると消費者の印象は悪いため、一度に値段を大きく引き上げて、最小限の値上げ回数にとどめたい企業は多い。ただ、150円もの円安水準は想定外だと見ています。また、ガスや電気代も今後値上がるとされている。この状況が続くと、来年の春に各社再び値上げに踏み出す可能性があります」
安心できない状況がしばらく続きそうだ。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)