あまりにかゆみが強いと、死にたい気持ちになる場合もあります。かゆみとはそれくらい耐え難く、思いつめてしまう人がいることは想像に難くないでしょう。研究でもかゆみと希死念慮(死んでしまいたい気持ち)の関係が報告されています。

 もちろん、皮膚の炎症によるかゆみもあります。かゆみの原因のすべてが気持ちの問題ではありません。アトピーなど皮膚の炎症によるかゆみは、原因のたんぱく質がわかってきました。主にインターロイキン31というたんぱく質が担当しています。このインターロイキン31をブロックする薬が2022年8月から保険承認され、病院で使用可能となっています。

 ストレスと皮膚症状の関係は多く知られていますが、今回はかゆみに着目して解説しました。誰かの行動に釣られて脳がかゆみと判断してしまう現象は、そういうことがあるんだと認識するだけでかゆみは減少します。また、皮膚の炎症によるかゆみは新薬を使って治療することが可能です。心因性なのかそうでないかで、治療が変わってくるのです。

文献 J Eur Acad Dermatol Venereol 2008; 22: 1062-1069.
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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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