AERA 2023年3月6日号より
AERA 2023年3月6日号より
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 地球中心部の「内核」の動きが注目されている。回転が止まり逆回転している、というのだ。専門家に解説してもらった。AERA 2023年3月6日号より紹介する。

【写真】東京工業大学准教授 太田健二さん

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 地球中心部の「内核」は回転を止め、逆回転を始めた──。北京大学の研究グループが今年1月、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」にこんな論文を発表した。内核を通過する地震波を調べた結果、この数十年間で内核が回転を停止したり、逆回転したりしている可能性があるというのだ。

 そもそも地球の「内核」とは何か。

「内核は地球の中心に存在する鉄の玉みたいなものです」

 こう解説するのは東京工業大学理学院地球惑星科学系の太田健二准教授だ。

 半径6400キロの地球は、表面付近の「地殻」から中心部に向かって「マントル」(深さ約30~2900キロ)、「外核」(同約2900~5150キロ)、「内核」(同約5150~6400キロ)に分類される。溶融した岩石(マグマ)などの液体と固体が混じるマントル、その下には金属が溶融した外核、さらなる深部に固体の鉄とニッケルが主成分の内核がある。

「地球は自転していますが、内核も自転しています。ただ、地殻やマントルと、内核の自転速度は異なります」(太田さん)

■逆回転も「あり有る」

 内核は液体の外核に覆われているため、地球の自転とは異なる速度で回転できるというわけだ。地殻やマントルの自転速度は1日24時間。内核はこれよりも速く回転していると考えられてきた。が、実態は速い時期も遅い時期もあることが近年の研究で分かってきた。こうした研究トレンドを踏まえ、今回の北京大学の発表内容も「十分にあり得る」というのが太田さんの見解だ。

 となれば気になるのは、内核の回転の変化が地球全体に及ぼす影響だが、「心配はない」と太田さんは言う。理由は「内核があまりに小さいから」だ。

「今回の論文で注目されるのは、内核の回転の変化には数十年の周期があり、これはマントルの運動や全世界の平均気温と海水面変動の周期と連動している可能性がある、という点です」(同)

 内核の体積は地球全体の0.7%にすぎない。つまり、内核はより大きなマントルなどのリズムに影響を受けることはあっても、外核やマントルに影響を与えることはない、というのだ。

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