東京工業大学准教授 太田健二さん(39)/東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員などを経て現職(写真:本人提供)
東京工業大学准教授 太田健二さん(39)/東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員などを経て現職(写真:本人提供)

■磁場への影響

 とはいえ、内核は今も成長を続けている。約46億年前に誕生して間もない地球の中心部には固体の内核は存在せず、ドロドロにとけた液状の金属からなる今の外核で占められていた。その後、地球が冷えるにつれ、中心部の固体領域を広げてきたのが内核だ。

 この先、内核が大きくなると、どんなことが起きるのか。最も懸念されるのは地球の磁場への影響だと太田さんは言う。

「液状化した鉄の塊である外核が対流することで地球の磁場は発生しています。内核の成長につれて外核が小さくなると、地球は磁場を発生できなくなり、宇宙空間からの高エネルギーの粒子や電磁波をもろに受けて大気や海が消え、今の火星のように生命が存在できない惑星になるでしょう」

 これは、地球の核が全て固化する約20億年先までに起こることだという。

■「謎に満ちた生命体」

 太田さんらは2016年、地球の内核が誕生したのは約7億年前とする研究結果を英科学誌「ネイチャー」に発表した。内核の温度と圧力、熱伝導率から内核が誕生した時期を推定した結果、約7億年前であることが分かったのだ。

 これにより、それまで約30億年前と推定されていた内核の誕生時期を大幅に塗り替えると同時に、「地球史」の新たな謎が浮かんだ。

 古い岩石の成分調査などから地球の磁場は約30億年前から存在していたことが分かっている。内核が形成されていない時代から既に地球の磁場は発生していたということになれば、磁場はどうやって作られたのか、という謎が浮上したのだ。太田さんは言う。

「地球という惑星は今なお謎に満ちた生命体です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年3月6日号

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