大勢の観客が集まるパレードに参加しても、松本はやっぱりどこか無愛想でムスッとしているし、気安く手を振ったりはしない。木村は木村で相変わらず格好つけているし、それが絵になっていてとてつもなく格好良い。決して「明るくニコニコ」とかではない。でも、そこがいい。
テレビは人間を消費するメディアである。たくさんテレビに出ていると、芸能人は少しずつ身近な存在になってくる。視聴者は、家族や友人のように何回も顔を合わせているような錯覚に陥り、一方的に親近感を抱き、気安く考えるようになることもある。
でも、本物のスターは、どれだけテレビに出ても決して消費されることがない。何度見てもそのたびに新鮮に受け止められ、そのまま価値を保つことができる。
そうなっているのは、変わらないように見える彼らが密かにアップデートを続けてきたからだろう。自分の中の本質的な部分だけは一切変えずに、それ以外のことは時代に合わせてマイナーチェンジを繰り返していく。その手際があまりにも鮮やかなので、ほとんどの人はそれを意識することもない。
スターは時代の壁をやすやすと超えてくる。ダウンタウンは面白い。キムタクは格好良い。30年前にそう思っていた自分が、今も全く疑いなくそう言い切れることは1つの奇跡である。テレビの影響力が落ちてきている中で、存在自体が見世物になる本物のスターがテレビから生まれるという現象は、ひょっとすると彼らの世代で最後になるのかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)