選抜試験の流れを図にまとめた。
最初の書類選抜では、エントリーシートなど必要書類を提出する。続く第0次選抜ではオンラインでの英語の試験が行われ、その合格者だけが同じく0次選抜の次のステップに進む。
第1次選抜では、試験会場に行き、医学検査を受けたり「なぜ宇宙飛行士になりたいのか」をプレゼンする場がある。また、さまざまなテストを通して受験者の精神的・肉体的な資質が宇宙飛行士に適しているかどうかをチェックされる。第2次、第3次と進むにつれて試験の内容は濃く、具体的になり、一般には行われないような精密な医学検査も行われる。2008年度の第3次試験は、筑波宇宙センターとアメリカのNASAジョンソン宇宙センターで、18日間にわたり実施された。
筑波の試験で有名なのが、閉鎖環境試験だ。受験者は閉鎖的な居住モジュール内で1週間を過ごし、試験官との通信以外は外部との接触が一切断たれる。ストレス環境のなかで、個人の作業効率や正確さ、仲間と協力できるか、役割分担がうまく構築できるか、などが試される。
国際宇宙ステーション(ISS)で約半年におよぶ長期滞在ミッションが行われ、アルテミス計画では月での活動がはじまるなか、こうした検査の重要性は増している。
書類選抜から第0次、1次、2次、3次のすべての試験にパスすると、最後に、ほんの数名が宇宙飛行士候補者に選ばれる。応募時点から候補者が選ばれるまでに、1年以上の時間がかかる。しかし、それでも彼らはまだ宇宙飛行士ではなく、あくまでも候補者。宇宙飛行士になる「チャンス」が与えられただけだ。ここからさらに約3年におよぶ訓練を受けて、やっと正式な宇宙飛行士になることができる。
(構成/生活・文化編集部 塩澤 巧)