
ロシアが怖くなったとか、戦争をやめるべきだとかいう人はいなかった一方、ショックを受けたという人は半数だった。
このミニ調査の以前にも、数十人のキーウ市民に同じ質問をした。ほぼ全員が、ミサイル攻撃に激しい怒りをあらわにした。タクシー運転手のオレクさんは(47)は「2月に本格侵攻が始まったころは、悪いのはプーチン一人で、ロシアの大衆は騙されているのだと思っていた。部分的動員に応じるロシア人たちが現れ、ミサイルのみさかいない攻撃が始まり、ロシア人全員に責任がある、と今は思っています」と話した。
ウクライナの都市部では、ミサイルでできた穴は、当局がすぐ工事してふさいでいる。水道の復旧も早かった。ロシアが、ウクライナ都市部の市民を殺すことで、その士気を下げようと思っているのなら、見当違いだ。
とはいえ、25日現在、キーウ市内の多くの地区で停電が続く。商店の半数はシャッターを降ろし、私が知り合いに連絡しようとしても、WiFiがつながらない。市民生活の多くがストップしている。
「来週もロシアのミサイル攻撃があると思うよ」。タクシーに乗ったら、元軍人だという運転手が言った。軍事筋からの情報だろうか。再び、水道が出なくなり、停電が広がるのかもしれない。弱いものいじめ、としか言いようのない、理不尽なロシアの攻撃である。

ロシアによるウクライナへの大規模なミサイル攻撃は、10月10日と11月15日にもあった。前者では120人以上が死傷した。
「ミサイルは児童公園に落ちました。周りに軍事施設は何もありません」。その10月に攻撃されたキーウ中心部の公園をウクライナ人女性、ワレンチナさん(28)が11月中旬、甥を連れて散歩していた。彼女の知り合いの女性が1人、ここで亡くなったという。「時間は午前8時過ぎでした。少し遅かったら、遊びに来た多くの児童が死んでいたことでしょう」
民間人や民間施設を狙った攻撃は戦時であっても国際法で禁止されている。ミサイルを撃ったロシア人たちは、将来、国際刑事裁判所で裁かれる可能性もある。
岡野直/1985年、朝日新聞社入社。プーシキン・ロシア語大学(モスクワ)に留学後、社会部で基地問題や自衛隊・米軍を取材。シンガポール特派員として東南アジアを担当した。2021年からフリーに。関心はロシア、観光、文学。全国通訳案内士(ロシア語)。共著に『自衛隊知られざる変容』(朝日新聞社)