中国に対しても、首相レベルからの外交をもっと緊密に行いながら、台湾への武力侵攻は国際的な反発が貿易立国中国を窮地に追い込むことを伝え、日本が軍事面では米国を支援せざるを得ないことを伝え、他方で台湾の一方的な独立の動きを日本は支持しないと明確に示すことで、自制を求めるべきである。

 そして、日本は韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む多くの東アジア諸国と連携して、戦争を回避しなければならないという国際世論を強固にしなければならない。

 気づけば、日本以外の中国の周辺諸国は皆、バランス外交を実践している。インドネシアやマレーシアは、中国を囲い込もうとする西側の同盟、例えば米英豪の軍事同盟AUKUSの設立時など、軍事的緊張を高めるとして懸念を表明した(日本は大歓迎した)。今年の夏、中国の強い反対を押し切ってなされた米下院議長ナンシー・ペロシ氏の訪台の後、韓国を訪問した同氏に、韓国の大統領は面会に応じず、電話会談のみにとどめた(日本は大歓迎した)。

 たとえ「守護神アメリカ」でも、日本の安全を脅かす場面では、言うべきことは陰に陽に言わなければならない。

 台湾有事は、まだ起きておらず、不可避ではない。

 台湾有事を起こさせないためには、敵基地攻撃能力の保有や防衛予算の急増ではなく「緊張緩和のための外交」こそが急務である。

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