8月26日、訪問先の台湾で蔡英文総統(右)と会談した米国のブラックバーン上院議員
8月26日、訪問先の台湾で蔡英文総統(右)と会談した米国のブラックバーン上院議員
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 シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」代表・上級研究員で弁護士の猿田佐世さんは、自身が受け持つ東京六大学の一つでの講義で学生たちに「台湾有事の際、日本はどうすべきか」のテーマでレポートを求めたところ、「台湾有事の意味が分かりません」などのコメントが出て、驚愕した。クラスの3分の2が台湾有事を「知らない」と答えたという。

 政府は「台湾有事は日本有事」と唱えながら、この年末にも敵基地攻撃能力を認め、5年内の年間防衛予算2倍増を閣議決定しようとしているが、国民的議論の末に決定されるべき大きな変化にもかかわらず、賛否の議論は社会でほとんど耳にしない。わずかになされている議論でも、空虚な軍拡論一本やりで、重要な検討事項はことごとく漏れ落ちている。今の議論から漏れ落ちているのは何か――。

記事前半<<優秀な大学生でも「台湾有事の意味がわからない」 日本人が決定的に欠如する危機意識とは?>>から続く。

*  *  *

<でも防衛予算を2倍にすれば、中国に対抗できる軍事力が備えられるのでは?>

 こう考える人もいるだろう。だが、年間の防衛予算を従来の2倍にすると、日本は米中に次ぐ世界3位の防衛費(年間)を支出する国になる。しかし、それでも中国の軍事費の4割に過ぎない。既に、2022年には中国のGDPは日本の約4倍となり、日本が中国と同じレベルの軍事費を支出するには、大幅な増税もしくは他の国家支出を大幅に削り、現在の生活レベルを相当程度落とさなければ不可能である。

 つまるところ、一見威勢よく軍事力を強化しても、日本に勝ち目はない。

■欧米に頼っても限界がある

<いやいや、日本だけで中国にかなわないのはわかっている。でも、米国や欧州諸国の軍事力と合わせて対抗するから大丈夫>

 しかし、台湾有事となった際に、米国が軍事介入するとは限らない。米国がウクライナ戦争に介入しないのは、「ウクライナが同盟国でないから」ではない。同盟国でない国の戦争にアメリカはこれまで散々介入してきた。米国がウクライナ戦争に介入しないのは、介入すれば第3次世界大戦になる可能性があるからであり、ロシアが核大国、軍事大国であってロシアの抑止力が米国に対して効いているからである。言うまでもないが、中国も、核大国であり、軍事大国である。

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