■レーシックに代わりICLが増加
一方、ICLは、マイナス6D以上の近視の人や、円錐角膜が軽度の人、角膜が薄い人でも受けられる。ICLは正式には「有水晶体眼内レンズ」と呼ばれ、10年に厚生労働省に認可された。
角膜の端を約3ミリ切開し、そこからソフトコンタクトレンズに似た柔らかいレンズを虹彩(角膜と水晶体の間の薄い膜)と水晶体の間に挿入する。
当初は、レーシックを受けられない近視の強い人ができる視力回復手術という位置づけだった。
「最近は、レーシックの条件に当てはまる場合でも、ICLのほうが安心と考え、最初からICLを希望する人も増えています」(吉野医師)
レーシックは、不適切な手術をした病院を相手に患者が集団訴訟を起こしたり、「レーシック難民」という言葉が生まれたりと、負の印象もある。
「レーシックは、正しい適応の選択と手術が行われれば今も安全な手術です。問題が起きる最も多い原因が『過矯正』です。視力は必ずしも遠くが見えればよいわけではありません。見えすぎることで、肩こり、頭痛、吐き気などに悩まされ、精神的に不調になる人もいます。年齢やパソコンなどの近業作業が多いかどうかなど、患者の背景に配慮する必要があり、手術前に使い捨てのコンタクトレンズを一定期間試し、シミュレーションを行うなどきめ細かな術前検査が必要になることもあります」(同)
レーシックもICLも老眼は防げないので、40代以降になると、近くが見にくくなる。40代以降で手術を希望する人は、その点を十分考慮する必要もある。
ICLは、一度レンズを入れても後から取り出せるのが一つの利点だ。通常のコンタクトレンズのように洗浄する必要はなく、入れっぱなしにできるが、不具合があったときや将来的に白内障の手術を受けるときには、摘出する。
■ICLの手術は資格が必要
ICLの手術は認定医でなければ実施できない。北里大学病院眼科・医療衛生学部教授の神谷和孝医師はこう話す。