視力が悪い人でも裸眼で見えるようになる「視力回復手術」。レーシックが主流だったが、近年は眼内コンタクトレンズ(ICL)の手術を受ける人が増加している。対象となる人や手術方法、合併症はどのように異なるのか。専門医を取材した。
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近視や遠視、乱視を矯正し、裸眼でも見えるようにする「視力回復手術」。「屈折矯正手術」とも呼ばれ、主にレーシックと眼内コンタクトレンズ(以下、ICL)がある。
レーシックは2000年代以降急速に普及した手術で、角膜(黒目)の表面を「エキシマレーザー」と呼ばれる高性能レーザーで削る。正視の人は、角膜から入った光が眼底(眼球内部の内側の壁)にある網膜の黄斑部で像を結ぶ。しかし近視の人は、通常眼球の前後の長さ(眼軸長)が正視の人よりも長く、黄斑部よりも手前で像を結び、像がぼやけて見える。レーシックで角膜を凹面に削ることにより、黄斑部で像を結び、遠くのものにもピントが合う。
近視が強いほど眼軸長が長いため、角膜を深く削る必要がある。しかし削りすぎると角膜が眼圧に耐え切れずに突出する「角膜拡張症」という合併症の危険が高くなる。
また、強い近視の人ほど、近視の戻りが起こりやすいといわれている。
日本眼科学会が作成した「屈折矯正手術のガイドライン(第7版)」では、レーシックの対象を原則マイナス6Dまでとしている。「D(ジオプトリー)」とは、メガネの処方箋やコンタクトレンズが入っている箱に表示されている数値で、正視は「0」、近視が強くなるほど、マイナスの数値が大きくなる。
また、角膜が突出し、突出部の角膜が薄くなっている「円錐角膜」の人や角膜の厚みが十分にない人もレーシックを受けることができない。吉野眼科クリニック院長の吉野健一医師はこう話す。
「レーシックを希望して受診しても4、5人に1人は手術の条件に合いません。安全に手術を実施できるかどうか、見極めることが大事です」