――「疑う」、ですか?
「疑う」と言っても、「疑心暗鬼になれ」ということではありません。ここでの「疑う」とは、言い換えると「他によい方法がないか考える」ということです。
私が、前職のTBSでマーケティングを担当していた時の話を紹介します。
TBSの人気番組「SASUKE」は、当時は番組視聴率が2ケタを割り、下降傾向にありました。視聴率の分析結果を見ると、50代の視聴者層が最も多く、若者が少ない。「SASUKE=50代以上が観る番組」という認識が社内の「常識」となっていました。
でも、私には「本当にそうなのか?」という違和感がありました。そこで、Twitterの直近2回の反響を調べてみたところ、「あれ、SASUKEやってるじゃん!」「完全に見逃した。SASUKEやってるなら知らせろよ……」といった若者のツイートが多いことがわかりました。
そこで、WEBやSNSでの告知プロモーションを本格的に展開。当時は一般的なプロモーション施策ではなかったため社内には反対意見もありましたが、プロデューサーと一緒に粛々と進めた結果、視聴率は2ケタに回復。視聴者層も若者中心に変化したんです。
■これまでの考え方すらも「疑う」
――みんなが「これが問題だ」と思っていることの前提を、まずは疑ってみるということですね。
みんなが「問題だ」「当たり前だ」と思っている裏に、実は「あれ? もしかしたら……」という真実が隠れていることがあります。そこに気づくことで、周囲より一歩先んじて成果を挙げられるチャンスがあるんです。
そこに気づくためには、世の中の情報や「常識」とされていることなど、すべてをゼロベースで疑い、情報の精度を確認すること。そのための情報の取り方や読み解き方、つまり「疑い方」は、特に力を入れて書いたところです。
その意味で、この本はよくある「問題解決本」にはしたくなかった。外部環境が刻々と変化する今日では、「問題」すらも自ら定義することが求められる時代だと思っています。