YCCは16年に日銀が導入した景気のテコ入れ策で、例えば、10年国債の利回りをおおむねゼロ%に定め、その水準になるよう国債買い入れを実施する。もし、YCCを修正すれば為替は円高方向に振れる余地が出てくる。
「日銀が今のタイミングでYCCを調正するのは理にかなっていると思いますが、10年国債の利回りをアメリカのように大きく上げられるような状況にはならない。なのでFedが利上げを停止しても日米の金利差は縮まらず、為替についても、少し円高に振れる程度、と予測しています」
■価格転嫁と賃金上昇
日本の物価高は22年秋までは円安や資源、原材料の高騰を原因とする「コストプッシュ型」だった。
「しかし、それ以降、日本はポストコロナのアメリカを1年遅れでたどるように、本来のインフレ、すなわち、需要がついてくるかたちの物価高が広がっていくでしょう」と、藤田さんは言う。
「22年10月以降、日本経済はポストコロナに向けて動き出したと判断しています。第7波の感染拡大にもかかわらず、国内需要には勢いがありました。第4四半期の消費も相当強いでしょう」
その理由として、藤田さんはペントアップ需要と賃金上昇を挙げる。
「アメリカに限らず、どこの国でもポストコロナは数四半期、ペントアップ需要によって相当、国内需要が強くなりました。みなさん、外出して消費する機会がなかったので、その間に『過剰貯蓄』が生まれています。それが世の中に出てきて、ペントアップ需要につながる」
通常、これだけ物価が上がると実質賃金が下がり、消費が腰折れすることが多いという。
「ですが、過剰貯蓄の放出によるペントアップ需要があるので、消費はずっと増え続けています」
さらに、だ。
ペントアップ需要から少し遅れるかたちで賃金上昇が追いついてくる。
上場企業の22年9月中間決算は業績を伸ばす企業が相次いだ。純利益は前年同期を約1割上回り、中間期としては過去最高水準となった。23年3月期決算の業績予想を上方修正するメーカーも相次いでいる。