「企業業績が好調な要因として大きいのは価格転嫁が進んできた、ということです。これまではエネルギー価格や輸入価格が上がって企業収益を圧迫してきましたが、それを製品価格に転嫁していくことが企業全体の流れとして定着してきた」

 物価と賃金の関係は基本的に、先に物価が上がって、後から賃金がついてくる。

「製品価格を値上げして、企業がある程度収益を確保しなければ賃金を上げることはできません。でも、これからは物価に賃金上昇が追いついてくる。日本ではこの循環が本当に30年間なかったんですよ。すでにそのトレンドが表れてきて、コロナ前よりも賃金上昇率が増しています」

 では、アルバイトなど、非正規労働者の賃金についてはどうか?

「例えば、コロナ禍でサービス業では人手を減らしました。ところが今、人の需要がすごく増えているのにサービス業ではなかなか人をとれない。これは確実に賃金上昇圧力につながります」

■米国の景気後退はない?

 これまで日経平均株価は、円安になると上昇した。しかし、今回の円安ではその効果は限定的だった。

「本来であれば、輸出企業を中心に株価はもっと上がる余地はあったと思います。ところが日本は、半導体など、世界的な部品の供給不足のダメージを最も大きく受けた国の一つでした。代表的な輸出企業である自動車メーカーは生産計画を繰り返し下方修正した。製品が在庫不足であるにもかかわらず、いまだに生産が十分にできていない状態が続いています」

 これから部品不足が徐々に回復してくると、輸出メーカーは円安のメリットをさらに享受できるようになる。

「ポストコロナにおけるペントアップ需要や賃金上昇による堅調な内需のほか、部品不足解消による受注残の消化という要因があるので、日本企業の業績アップの可能性はかなりあります」

 ちなみに日本株は欧米市場、特に米国株の動きに大きく影響される。米国経済が悪化する恐れはないのか?

「今、アメリカのインフレ率は徐々に低下し、減速感も出ていますが、景気後退に陥るとは思いません。日本株は年初に調整局面もあると思いますが、年末にかけて上昇していくと予測しています」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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