幸いなことに全身への転移はなく、6月21日に左腕を切断する手術を行った。手術直前の様子を動画で配信した。「マジで変なんですけど、楽しみなんですよね。いっぱい応援してもらって結構受け入れ態勢ができたんですよ。明日から新しい自分が始まる感じとか、そういう思考になっていますね今。不安とか全くないです。自分一人で闘っているんじゃないなあと思ったし、落ち込みようがないですね。こんなに応援してもらったら」と表情は明るかった。
手術後も左腕を失ったショックはなかったという。
「(切断した)左腕の写真を、お願いして見せてもらいました。すごっ!腕や!って感じですかね。指でピースとかポーズしといたほうが良かったかなと思いました」と声を弾ませる。
センシティブな内容を笑いに転化させるのは、周囲の人たちに心の負担を掛けさせたくないという潜在意識があるように感じられる。
宮野さんは、「片腕男子」というチャンネル名でYouTube動画を配信し続けている。片腕で料理、洗い物、洗濯する様子や、友人たちと談笑する姿。その様子は等身大の25歳の青年だ。
病気になり、人生で大きな変化も決断した。大学時代に、「普通の仕事は無理だな」とお笑い芸人を目指した。最初から大きな熱量ではなかったかもしれない。ワタナベエンターテインメントの養成所に所属して芸を磨くことで、お笑いを好きな気持ちが強固になり、「アルフォンス」というコンビを組んだときの元相方・飯谷さんや、一生の財産となる芸人仲間たちと巡り合えた。養成所を卒業後に事務所への所属はかなわず、フリーの芸人で活動していたが、左腕を切断したことを転機に芸人は辞めた。
「僕はM-1が一番の目標だったんです。養成所に在籍していたときはバトルライブ、競争が性に合っていて。M-1はわかりやすい目標でした。(左腕がなくなっても)舞台に立って遜色なくできるけど、『(腕が)ないのに凄い』『(腕が)ないのに面白い』『(腕がないのが)気にならないぐらい頑張っている』ってどうしても言われる。それは自分の目指していたこととは違う。もうあの土俵には立てないと。芸人を辞めることに迷いはありませんでした」