通常、子宮内膜組織は女性ホルモンの働きにより増殖し、妊娠しないと月に一度、子宮の壁からはがれて体外に排出される。これが月経だ。子宮筋層内の組織も同じように女性ホルモンの作用で増殖し、はがれることをくり返すため、子宮腺筋症になると子宮筋層が厚くなり、子宮全体が大きくなる。それに伴い、出血量が増える「過多月経」や、月経の期間が長くなる「過長月経」、「月経痛」などの症状が起こる。
加えて、月経時以外にも腰が痛い、おなかが張るなど「慢性骨盤痛」の症状がみられることも。また、子宮内膜症では、子宮と直腸の間のすき間(ダグラス窩)に内膜症ができることで子宮と直腸が癒着することがあり、排便痛や性交痛が強くなる。
「この症状がみられる患者さんにMRI検査をすると内膜症が子宮や直腸に入り込んでいたり、腺筋症が見つかることもあるため、内膜症の人で、月経痛に加えて排便痛や性交痛が強いときには腺筋症なども疑うことが重要です」(小林医師)
月経痛の強さや月経量の多さは他人と比較することが難しく、患者も自身の症状がどのぐらい重いのかを判断しにくい。そのため、「みんな同じだろう」「生理がつらいのは仕方がない」と、がまんしてしまうことも多い。さらに、つらさを周囲に理解してもらいにくいことも患者を苦しめる要因になると、手稲渓仁会病院産婦人科主任部長の和田真一郎医師は話す。
「月経痛がつらくて仕事を休みたくても、職場に理解してもらえず休みにくい、人の目も気になるという人も多くいます。貧血や痛みのつらさに加え、過長月経で何週間もナプキンを外せない煩わしさや、頻繁にトイレに行かなければならない苦労など、日常生活への影響は大きいと思います」(和田医師)
■不妊や早産の原因になることも
一般的に、日中でも夜用のナプキンが必要、あるいは1~2時間に一度交換が必要、タンポンでも漏れる、夜間にもトイレに行く、などは過多月経の目安と考えられる。症状の程度は、腺筋症の状態や子宮の大きさなどにより個人差があるが、子宮腺筋症は慢性かつ進行性の病気であり、罹患期間が長いほど、治療をしなければ症状も悪化する。そして、女性ホルモンが減少して閉経を迎えるまで自然に治ることはない。