「いい加減あいつ(靖さん)をあぼんしないと」
「医療従事者が(靖さんを)長生きさせている。早くあぼんさせてくれ」
「あぼんの目的達成のため、寿命を縮める最後のチャンス」
などと殺意を示すようなやりとりが交わされていた。
そして、11年3月5日。山本被告と淳子被告は、長野県の精神科の病院に入院していた靖さんを、神奈川県の病院に転院させるとの理由で連れ出し、新幹線で大宮駅(埼玉県)に到着すると、車いすの靖さんをレンタカーで東京都江戸川区内のアパートに運び込み、そこに合流した大久保被告が「靖さんに薬液を投与して殺害した」(検察)。
靖さんを殺害後、淳子被告は偽造された死亡診断書を役所に出して火葬許可書を入手。犯行前から近くの葬儀場や山本被告らが宿泊するホテルなども手配しており、殺害の5日後の3月10日に火葬したとした。数日後には、
「化け物(靖さん)さらばじゃ」
とのメールもあったという。
その後、4月22日、山本被告はタイなどを経由して、アフリカ南部の国、エスワティニ(旧スワジランド)に行き、空港近くに靖さんの遺骨を埋めたとされる。その時の現地の写真もメールで送っていた。遺骨を埋めるためだったのか、パームツリーのような木の下で、赤い土を掘っている様子が写っていた。
検察側は、犯行の3日前に、「ゴールは近い」と靖さん殺害の決意をメールしている点や、犯行の直前に、大久保被告が山本被告に、車いすに人が乗ったまま運べる車を手配できるレンタカー会社のURLなどを送り、
「(新幹線は)大宮駅がちょうどいい。高崎駅まで迎えに行ってもいいが」
と具体的に提案している点などを踏まえ、
「事前にアパートやレンタカー、車いすを予約するなど、綿密な計画を立てて実行した」
「入院していた病院での診察記録などから、靖さんが病死や自然死することは考えられない」
などとして、3人が共謀して犯行に及んだと指摘した。