難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者から「安楽死」の依頼を受け、知人の医師と共謀して殺害した罪で起訴された元医師の山本直樹被告(45)が、父親への殺人罪に問われた事件。山本被告に対する裁判員裁判が1月12日、京都地裁で始まった。弁護側は、知人の医師が実行犯で、単独の犯行であると主張し、無罪を訴えた。この事件、「安楽死事件」と性質は一変し、検察側の冒頭陳述からは、父親や老人全般に対する被告らの激しい侮蔑や偏見が見て取れる。
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山本被告と医師の大久保愉一(よしかず)被告(44)は、ALSの女性患者(当時51)から女性自身の殺害を依頼され、2019年11月、京都市内の女性患者のマンションを訪れ、薬物を注入して殺害したとして嘱託殺人の罪に問われている。その事件の捜査の過程で、山本被告の父、靖さん(当時77)を殺害した疑いが浮上し、山本被告と共謀したとして大久保被告と、山本被告の母親の淳子被告(78)も殺人罪で起訴された。
ALSの女性患者への嘱託殺人事件は裁判員裁判にならないこともあり、靖さんの事件の裁判とは分離された。
靖さん殺害事件の初公判で山本被告は、検察側の起訴内容について、
「私は母親や大久保被告と共謀して父を殺害したことはありません」
と否認し、無罪を主張した。
検察側は冒頭陳述で、山本被告らの犯行の詳しい経緯などについて述べた。
まず、動機について。検察は、靖さんが長く精神疾患を患い、入退院を繰り返していたことで、山本被告や淳子被告は約30年間、苦しい状況だったとした。そこで、山本被告の知人の大久保被告とともに「厄介払いのため、殺害を計画した」とした。
検察は、3被告が殺意を持っていた証拠として、3人がやりとりした150通のメールすべてを証拠として開示した。
「厄介」とされる靖さんのことを、「くそじじい」「ぼけじい」「粗大ごみ」などと誹謗し、「あぼん(死なす、殺すといった意味)」といった隠語を使って、
「父をあぼんしたら、普通の家庭」